ゴールデンウィークは悲しいことに飼い主と会えなかった。 　オレの落ちこみ、重傷でやってきた強盗の一人を取り逃がすというありえない失態を演じてしまった。ポチたまが犯人の腕か足を噛んだから、一ヵ月以内に犯人は見つかるだろうけど最低だ。使えないわんわんにも飼い主は優しく餌をくれる。自分がゴールデンウィーク後になるからってお土産だけ先にオレに届けてくれる飼い主、素敵。 　ちなみに焼き菓子の詰め合わせだった。うまうま。 　 　オレは生徒会長の部屋で暮らしていても鍵を持っていないので外出したらいつも会長に迎えに来てもらう。今回も裏側の門で待っている会長と落ち合った。 　 「どうして犬？」 「一緒に着ようと思って」 　 　犬の着ぐるみというかパジャマみたいなつなぎを着ている会長。男前な外見を裏切る格好。 　羞恥心がなさ過ぎる。ここで嫌がったらわんわんのプライドが廃るとオレは頷いてやった。けれど意外に喜ばなかった。 　どうかしたのかと思えば抱きつかれて頭を撫でまわされる。 　 「髪の毛が！？」 　 　気づくのが遅い。強盗犯が放火魔のごとく屋敷に火をつけたせいで髪が焦げたので全体的に髪の毛を切ってもらった。 　 「ベリーショートだとぉ」 　 　いやだったのか身体を震わせている会長。勝手に怒られても困る。「いや？」と聞いたら「愛してる」と返された。即答だったのが大変気持ち悪い。かわいいを連発する。おかしい。全然かわいくないと思う。よくても子ザルだ。 　 「かわいすぎてやばい。ずっとうなじやオデコが出てるとか犯罪じゃないかっ」 　 　病気過ぎると思いながら抱きしめられるままにしていたら裏門の門番さんに怒られた。二時間ぐらい抱き合っていたらしい。バカだ。わんわんはバカでもいいワン。人間がしっかりするといいよ。