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19 会うと必ずお菓子をもらえる。
たぬポンに説教というか軽い忠告を受けている間も何もしない賑やかしの教師三人。実は心がないロボットで指示がないと動けないのか?
この学園の教師の質は結構高い。
預かっている子供のレベルが上流階級なわけだから当然だ。
ただし授業レベルが平均的に高いだけで、人間レベルは人によっては平均以下なことがある。
専門知識だけを詰め込んでいるコミュ障な教師は、異様にコミュ力が高い教師と担任と副担という扱いで組んでフォローし合っている。
生徒は一律、教師は教師として見ているが、教師にも色々といる。そしてそのことを分かっているのは残念なことに校長ぐらいなもので理事長は偏った仕事の割り振りに気軽に疑問を投げたりする。
私立で教師の入れ替わりがない。そのため騙し騙しなんとかなっているものが、転入生の新風で崩れ出すのは生徒の間だけではなく教師の力関係も同じ。
賢いわんわんはたぬポンがお疲れな理由が大体読めましたとさ。
委員会や部活の顧問というのは経験者や慣れている人間に一任される。新任に押し付けることもままあるかもしれないが、色々と相性がある。
生徒会役員に選ばれる人間たちは、頭が回る学力優秀者が多いので学年主任や学力ではなく口が回るタイプが選ばれる。
蛇さん曰く、ホスト教師というやつだ。
見た目がホストのように派手めスーツで美形で渋い系かチャラ男。ほどほどにおしゃべりで無言タイプはありえない。ホストなのに無言とか金返せって話だ。トークしろ、トーク。いや、見た目がホストってだけで、職業教師だろうけど。
逆に風紀の顧問は堅物で融通の利かないタイプ。それか委員長がしっかりしているという理由でお飾り的なちゃらんぽらんの採用。これは生徒が有能であるという証明のために教師を無能にするんだろう。何事も比較対象がある方が分かりやすい。
指示待ち人間が悪いわけじゃない。
けれど、この学園で求めらている人材というのはリーダーシップをとる人間。そうなると大多数の教師が理事長や校長に逆らえないので失格扱いになる。それもあってか生徒会役員の人気は高くなる。教師を尊敬しないから生徒の代表を持ち上げる。悪いことじゃないだろうけれど会長だって学園に通う生徒の一人だと忘れている人間が多いのではないだろうか。
「生徒会は問題ばかり起こすな」
一年の風紀委員長様は決めつけタイプ。中学の時に生徒会と敵対し続ける風紀にいたからか今もこんな調子。おいおい、わかってますか? ワレワレは宇宙人である。違う、二年生だぞ。オレは二年でお前は一年だろう。もっと言い方あるだろう。先輩、大人しくしてくださいよぉと腰を低くして揉み手をしろ。お菓子という名の賄賂をよこせ。ワイロ、大切だよワイロ。ワイフじゃないよ。
被害者に対して偉そうに調書を取る警察官みたいでイラッとする態度です。たぬポンですら「お前が全部悪い」みたいな言い方をしないで解放してくれたのにこの風紀委員長様ときたら寮に帰るオレと会長を見つけて、これだ。お小言タイムは明日に回せ。わんわんは疲れました。
「生徒会としての問題じゃない。俺たちの問題だ」
「アンタ個人の問題でも生徒会長なんだから自覚しろよな」
お前も風紀委員の自覚を持って先輩に対する敬意を見せろや。舐めとんのかワレ! いてまうぞ、コラ。
「はいはい、喧嘩する悪い子にはお菓子あげないぞ~」
低音のんびりゆったりボイスと言えばみゃーみゃーさんである。みゃーみゃーさんジュニアというのが正しいけれど面倒なのでみゃーみゃーさんはみゃーみゃーさんである。
「みゃーみゃーさん、みゃーみゃーさん!!」
会長の手を振りほどいてオレはみゃーみゃーさんの周りを「みゃーみゃーさん」と言いながらグルグル回る。朝に見かけたのに近寄れなかったから、今日は多めに回る。目も回った。
「みゃみゃ」
「わんわん落ち着け」
「みゃみゃ」
「あーん」
頭がクラクラするけど口を開けて待つと一口サイズのクッキーをもらった。噛むと中からチョコレートが出てくる。これは冷やして食べた方が美味しいんじゃないのか。
さすがのみゃーみゃーさんは「これから帰りだろ、持って行け」と未開封のお菓子をくれた。格好いい。輝いている。みゃーみゃーさんは一人目もジュニアも素晴らしい。
会うと必ずお菓子をもらえる。
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