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23 ご飯前に欲情禁止。
せめて誰かに生徒会室に顔を出さないことを連絡を入れるべきだろう。それとも、これも親衛隊長の仕事か。有能すぎるわ。
「デザートは食堂のパフェを届けさせる」
ちなみに本来配達とかそういったことはしていない。つまり親衛隊長が食堂に掛け合って用意してもらって、いそいそと運んできてくれている。気の利きっぷりにオレはメガネを休ませるように提案しようと考えていたことを思い出す。
「ニワトリとは知り合いの知り合いっていう付き合いで面と向かってはそんなに会ってない」
「俺よりもアイツは圭人のことを知ってる?」
それはどうだろう。ニンジン味のマフィンを食べながらオレは内心で首をひねる。実のところニワトリとは友達だと思ってる。親しき中にも礼儀ありをきちんと分かっている奴なので話していて楽だ。そして何より強い。それが一番の理由だろう。
ニワトリというかオレと顧客との連絡はメールや電話ではない。ゲームの中だ。そのことはもちろん会長には言っていないし、これから先も教えることはない。
パエリア程度でオレを丸裸に出来ると思わないことだ。いや、パエリア美味しいけどね。パフェは会長作じゃないし、労力を払ってるのは親衛隊長のメガネだから内緒は内緒。手作りプリンがデザートでついたら教えてたかもしれない。
「どう思う?」
「挑発してるのか?」
マフィンの美味さに適当に返しただけだ。何も考えてない。わんわんは本能優先だワン。
「……みゃーみゃーさんから貰ったお菓子を冷蔵庫に入れて」
オレは拘束されて動けないので頼むと嫌そうな顔をされたがちゃんと動く。自分が嫌なことだとしてもオレの願いは聞きたいということなんだろう。そういうところ、嫌いじゃない。
立っている奴は親でも使うどころか、座っている彼氏を立たせて使うのがわんわんです。手錠がなければもちろん自分でやるよ、本当だよ。
「圭人、けいと、けーいと!!」
褒めてくれと言わんばかりにへばりついてくる彼氏様がおっしゃる所には「圭人はかわいくてかわいくてかわいいから他の奴と話しないでよそ見しないで俺だけ見てて」という頭がどうかしている理論。
ラクダ色の頭を撫でてやると毛糸としか聞こえない発音で圭人と連呼する。至高のマフィンを食べつつコーヒーを飲むという至福。多少彼氏がうるさくてもどうでもいい。それにしてもオレが作ったアイスコーヒーを飲まない気なのか?
「卒業したら一緒に暮らそ? ね?」
ちょっとかわいい感じに言ってくる。
見た目を裏切って小悪魔スキルを発動するのか、お前は。
「一生一緒にいて。大学行かなくてもいい。ずっと俺の家にいて」
お前はどこまで俺を監禁し続けるつもりでいるんだ。運動不足は肥満の元です。わんわんは散歩好きなんで適度に外に出してください。ストレスを溜めます。
「……ねえ、圭人。宮本先生のことは、宮本先生の家族と仲がいいだけって前に言ってたけど」
「パエリア」
面倒な話の流れになる前に切ってしまうのがいい。
「パエリア食べたい。はやくして?」
自分でも愛想も何もない言い分なのは分かっているが会長は興奮して「そんなエロい顔しちゃダメだってば」と顔を赤くして貧乏ゆすりするように身体を震わせる。アイスコーヒーを飲み干して変に情欲に濡れた瞳で見てくるのでおでこをべしっと叩く。
ご飯前に欲情禁止。
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