オレは会長と別れる前提で動いている。 　別れたっていいから、嫌われたって構わないから好き勝手わがままが出来る。会長の束縛を嫌がらずに受け入れてやっているんだから、わがままはお互い様だ。 　 「弟宮が気になること言ってたし、オマエからは電話くるし」 　 　弟宮とは風紀の顧問のみゃーみゃーさんだ。 　オレがみゃーみゃーさんで統一するから分かりにくいところだけれど、学園にいるみゃーみゃーさんは組織の人間じゃない。 　ただみゃーみゃーさんたちは双子じゃないのにそっくりだから、必要があるなら入れ替わったりする。 　オレでも一瞬間違えそうになるほどにみゃーみゃーさんたちは入れ替わりが上手い。ただオレへの接し方が全然違うからすぐに分かる。演技力はイマイチだ。 　組織にいるみゃーみゃーさんがやってくるとなると結構な大事だけれど、今回はそこまでではないと判断された。と思ったんだけど飼い主がいるとなると分からなくなる。 　強盗犯の囲い込みもオレの情報の出どころも洗い終わって全部、繋がっている。ついでにムカつく奴の足を引っ張ってやろうか、考えて、ためらっていたけれど何かあっただろうか。オレの仕事に不備はないはずだ。 　 「今まで弟宮のところで酒飲んでた」 「そのままバイクはダメっ」 「だからここ泊まるわ」 「はい？」 　間抜けな声を上げたのは会長。 　 「んだよ、朝陽くんよぉ。オマエはソファで十分だよな？」 「いえ、あのっ」 「うちのかわいいわんわんにこんなドギツイもんを使おうとしといて……何か文句あんの？」 　 　あわあわオロオロな会長。飼い主のテンションはヤンキー。なんでこの人は貫禄を足蹴にするような、下っ端みたいな因縁のつけ方するんだ。人を煽るにはこういう口調が一番だと思っているのかもしれない。確かにある意味で正しいのかもしれない。 　会長が何かダンボールを抱えているとは思ったけれど、何の話だ。 　 「あ、あっ、待ってくださいっ！！　圭人には内緒だって！」 　 　悲痛な声を上げる会長を他所に絶対にニヤニヤ笑ってるだろう顔をヘルメットに隠した飼い主がダンボールを引っ張ってひっくり返した。床にドサドサ落ちていくものを会長が慌てて抱え込む。 　何か大切なものだったのかと見ると猫耳女装セット、各種拘束具つき。ＳＭ仕様のイロモノの道具が床に散らばっている現実にオレは遠い目になった。 　飼い主がテーブルに並べるように会長に指示した。 　ダンボールの中身が綺麗に並べられる。 　さっきの猫耳女装セット以外は温感ローションとアナルプラグ各種。尻尾をつけられるようになっていてサイズや材質が違う。メタルな感じやシリコンやスイッチがあるからバイブ機能がついてるのもある？ 　商品名なのかアナルバルーンとあるのが見える。尻に風船を入れるという変態プレイか。上級者過ぎる。なんてな。わかってる。尻穴拡張用の道具だ。飼い主が持っているから知っている。猫耳を除くと並べられているアダルトグッズはいわゆるアナル拡張用のものばかり。つまり、オレが狭いってことなのか。ケツの穴の小さいやつ？　うるせーやい。 　 「違うんだ、圭人っ。子猫セットしかなかっただけで耳と尻尾はちゃんと犬にするから」 「そこかよ、問題。朝陽くんは天然ボケかしら？」 「約束破ったわけじゃないんだ」 　 　本当だよ？　と床に正座して小首を傾げながら口にする会長。飼い主ガン無視でオレに弁解しだすのはアウトな気がしたけれど大丈夫らしい。「デカい図体でかわいいアピールか？」と笑いながら会長を膝で軽くつつく飼い主。 　よく見るとブーツ着用だ。 　玄関で脱がないとかさすがは飼い主。いつも人に靴を脱がせるから、そのまま上がり込んだんだろうけど、あとで床をぞうきん掛けしないといけない。というかスリッパは何処だ。かわいくて、もこもこしたスリッパじゃないと履きたくないとか言いだす人だぞ。それで揉めてたのか？ 　 ------------------------------------------------------------------------- ソファに手錠で繋がれたわんわん、 彼氏はアダルトグッズをテーブルに広げて正座、 フルフェイスヘルメットのライダーな飼い主は土足で入室して我が物顔。 ツッコミどころしかないけれどツッコミは不在！！