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** 男の扱いなら任せとけ!

わんわん以外の受け視点。 (明確なエロシーンはないです)  オレはとある人の愛人だった。  過去形じゃないのかもしれない。あの人が許してくれるならオレは今でも愛人だ。たった半年だけの付き合いなのにバカみたいだと思われるかもしれない。  でも、あの人はきっと自分に惚れるのは当然だって顔をして格好良く笑うんだろう。      物心ついた頃には義理の父親に身体を撫でまわされていた。男に媚びることは何とも思わなかったし命令されるままに客を取ったのは中学に上がる少し前。  たぶん義父は第二次成長期に入って、声変わりをしたり、身体の節々が出っ張ってきたオレに興味がなくなったのだ。  中学に通うこともなく、言われたとおりに男を楽しませていて、ふと気づいたのは、どうして自分で稼いだ金を何もしてない父親に渡さないとならないのか、そういうところ。  母親への情はオレと父親の関係を黙認している時点で消えた。知らないでいたのだと思って耐えていたのがバカみたいだ。自分だけで男を引き留められないからオレを差し出して結婚したのだと母親の口から聞かされて、心の中はやけにスッキリした。  オレは栄養面がよかったからか、見た目だけさっさと大人になった。高校生どころか落ち着いていれば大学生にも見られたりもする。金払いのいい男に甘えて囲ってもらったら、何度か修羅場にはなった。    その中であの人に出会った。    オレが誰の所有物であるのか、揉めに揉めたとある日に部屋の中にバイクで突っ込んできたイカれた人間。それがあの人だった。  アタッシュケースに入っていた札束をぶちまけて「コイツ、オレのな。は? 文句とかあるわけねえだろ」と言い放ってバイクの後ろに乗るように指示された。  その時のオレの格好は殴られまくって、血だらけで、鎖の跡もあって白濁液まみれをシーツに包んで隠してる状態。シャワー浴びたりちゃんと服着たいなんてことも言えずにシーツをまとわりつかせたままでオレはバイクに乗った。  オレの所有権を巡って争っていたのが小さなやくざの若頭たちだと後で聞いた。   『男にうつつを抜かしてシノギを疎かにするなんて粋じゃねえ』    そう低く言い放つ姿は格好良かったが明るい声で「ただ単にオマエに合うのがアイツらよりもオレってことだ」とHAHAHAと笑う。意外に軽くて適当でだけどやっぱり格好いいそんな人の愛人に気づいたらなっていた。  大切にしてもらって愛されていたのは間違いない。けれど、あくまで愛人であって彼の唯一絶対ではなかった。オレは保護されただけなんだと落ち着いて周りを見れるようになって理解した。    あの人を「飼い主」と呼んで慕う平凡な顔のダサめな男が同い年だと聞いて笑った。周りから「犬」だ「わんこ」だ「わんわん」だ、と言われても気にしてないのは心が強いからじゃなくて、ただ鈍いだけだろう。  オレは愛人としてあの人を受け入れられていることで、プライドを保っていた。けれど見せつけられる溺愛っぷりに嫉妬心は湧き立った。  オレとあの人の後始末をしているなんて聞いた時には腹が立って仕方がなかった。正妻の余裕なのかと内心で吐き捨てる。ゴツイ見た目じゃなくて、かわいらしい顔立ちの美人だったら、あの人はオレだけを選ぶのかなんて考えたのは出会って一ヵ月のこと。    根本からしてあの人が規格外だと知ったのは、を聞いてから、いいや、テレビを見てからだ。どうして気が付かなかったのかと思うほどの有名人に自分は抱かれていた。  女性関係がゴシップ記事を騒がすような人だっていうのは、ニュースなんてほとんど見ないオレでも知っていた。  あの人にとってオレなんて愛人という名のオモチャだとしても不思議じゃない。それなのにきちんとオレを見て愛してくれた。色狂いで自己嫌悪にまみれても「エロいのって最高じゃねえ?」とか笑ってくれる人だ。  好きで好きで愛しているけれどあんまりにも世界が違うから周りに嫉妬するのも馬鹿らしくなった頃、高校に通うかと話を持ち掛けられた。勉強をしていなければ特技があるわけでもないオレは普通の生活が送れるはずがない。  その屈折したオレの感情を汲み取ったのか提案されたのが「」だった。    男子校の、しかも全寮制ともなると溜まった性欲が暴力沙汰に繋がったりもする。  お金持ちのお坊ちゃまたちは鬱屈としているらしくて性的な話題をオープンにしない。そのせいでタガが外れると普通なら警察沙汰まっしぐらのことを平気でしてしまうという。  言ってしまうと集団での強姦事件。不祥事でしかないので、逆に男同士で恋人になるのを推讃したり色々と対策をとったりしているらしい。  だが、一番手っ取り早く生徒の中で性欲処理してくれる受け皿がいればいいよねという話になった。  普通に考えれば年齢的にいけないことだし、負担を強いることになる。  けれど本人がやりたいって思ってるなら話は別。  学校に行きたくても行けない子供、エロい事していないと落ち着かない子供。それぞれ学園に侵入してもらって、欲望の矛先をコントロールするという試み。  人によって卒業後の進路は様々。  また別の高校の新入生として、この仕事を続けて高校生が無理のある年齢になったら事務仕事をしたり、高校卒業資格があるから、そのまま大学入学や大手企業に就職なんてこともしているらしい。  もちろん誰にでも股を開けというわけじゃない。好みじゃないのは断っていいし、学校からお金をもらっているのは秘密。表向きには学業面が伴ってないので「スポーツ特待」や実家が資産家だったということになっている。    オレはあの人の愛人で、あの人が好きだけれど、体と心は別問題。  忙しいあの人に放置されれば身体が疼いて男を欲しがる。そういうオレのことをよく分かっているからこそ、あの人はオレを手放すんだろう。  そして、オレが新入生として並んでいる中に見つけたあの人の犬。  きっとオレの役目はあの犬の監視。あの人は言わなかったけれど、犬を誰よりもかわいがっているのはあの人だとオレは知っている。もう妬いたりしない。   『アイツには死ぬまで言わねえけど、オマエには教えとく。内緒だぞ』    オレにくれたがあるからこの先なにがあったって平気。少しズルいかもしれないけれど、あの人のことが好きだから、あの人のワガママは全部叶えてあげたい。  なんてことを思いながら、運動部の先輩たちのチンコをしゃぶる。力が強くて敵わなくて無理やり襲われて肉便器状態です、っていうシナリオで一年の春からずっとエッチ三昧。  三ヵ月や半年経つと愛着がわいたのか、正式に付き合いたいとか言わることもあった。けれど、のらりくらりとかわして二年目に突入。外からは真面目に部活の練習していて、戦績も上がってると思われているのに痴情のもつれがありそうな予感にちょっとピリピリ。  でも、かわいい系の美少年が自分の身体で誘惑して、あの人の犬を襲わせようっていう計画を全部潰せたからオレは偉いよね。  運動部員は大体がオレのお手つきで、先輩たちは今では何だかんだで言いなりだ。自分の身体やお金をチラつかせても言うことなんか聞くはずない。    あの人の補佐だっていう細目のキツネみたいな顔をした人いわく運動部は女日照りでかわいい系で性格悪い男の手足になるらしいけど「このおちんちんはオレのだよね?」の一言でフラグクラッシュ。  あの人の犬をオレの客のような運動部員たちがつまみ食いするなんて許せない。  これは守ってあげるっていう気持ちと運動部員たちはオレのオトコなんだからっていう独占欲とがある。あの人は犬に手を出していないって聞いたから、不特定多数が触れるなんて合っちゃいけない。あの人を本気で怒らせることになるかもしれないし、あの犬が泣くところなんてあの人は望まない。      あの人を愛していて、あの人が愛する犬のことも、そこそこ大事だから外れ役になっても別に構わない。     「うちのお兄ちゃんが病気でさぁ、よくわかんないけど。……だから、血縁者の臓器が必要なんだってー」 「へぇ、大変だな」 「片方でも血が繋がってるならケイがいるからさ。死ぬわけじゃないんだから協力してもらおうと思って」 「四人兄弟だったんだ?」 「いやもっといたんじゃないの? わかんねえけどお兄ちゃんの地下室に何人かいるの見たぞ」   「ふーん、スゲーな」   「先に内臓くれっていうとビビるかもしれないから恩を売ってやろうと思ってさ。邪魔だし、会長と引き離してやるのがケイのためだよな。オレ正しいだろ。よく頭いいって言われるんだ」   「あぁ、お前の周り頭いいな」   「オレが頭いいんだって! いや、友達のこと褒めてくれてサンキュウな。オマエいい奴だなぁ」      これはあの人が吐き気をもようすはずだとオレは納得した。    転入生の取り巻き役なんて最悪だと思ったけれど、これはこれでいいポジションかもしれない。運動部の先輩たちが卒業後もオレと繋がりたいなんてことを言いだしているからここら辺で株を下げておこう、みたいな。  組織の犬にはなれないけれど、オレはあの人との繋がりを切れる気がしない。求められればどんな情報だって揃えるしハニートラップ思いのまま。男の扱いなら任せとけ!   ------------------------------------------------------------------------- 【蛇足の余談】 実はエロ特待生な話を考え続けていて、前日談の別方向みたいなのが「わんわん」です。 (わんわんの組織と元締めが同じってだけの繋がり) いつかビッチが学園で荒稼ぎしたり、カウンセラーしたりする話を掲載したいと思っています。 運動部担当の体力ある男前ビッチ、美人で線が細い儚げ系ビッチ、攻めに見られがちだけどネコ専門なビッチ、明るく元気な王道の振りした転入生ビッチ!! ありとあらゆるビッチに支えられて穏やかな暮らしを演出する(非)王道学園という皮肉なのかギャグなのかシュール空間なのかな話。 ちなみに チワワ系男子(集団)攻め×格好いい男前美形受けが「生徒会長の特別なお仕事」になります。

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