蹴りの衝撃で外れた眼鏡とずれたカツラの転入生。思った通りの面構え。蛇さん曰くのお約束なんだろう。たぶん。 　 　 　今回の出来事をどうビジネスに持って行くかっていうと単純明快。 　 　さっき食堂にいた生徒たちの不快指数がどの程度だったのかって話。 　 　彼らは繊細な箱庭に生きているからか、ストレスに強くて弱い。期待されて重圧掛かってプレッシャーなんてものは生まれた時から背負っているから問題ない。 　けれど自分たちの領域を乱す存在に対する抵抗感が強い。 　生徒の半数以上が初等部から学園にいて九割以上が中等部からこの学園に通っている。中等部と高等部はやっぱりどこか違うけれど慣れ親しんだ場所が踏み荒らされるのを黙っていられない人間は多い。 　 　未だにやっぱり縁故採用や血族でまとまる企業が多いので、学園内の人と人の繋がりもそんな感じ。閉鎖的で前時代的。それが落ち着く人間が多い。和を乱すものは排斥する。 　ただ兄弟の中でも末っ子とか親戚をたらい回しにされた子供とか、家柄がいいせいでひねくれて落ちこぼれ気取りとか、はみ出し者は絶対に出るし、天才は天才過ぎて誰にも理解できない領域で話をしだす。 　 　一言で表すとヤンキーと根暗と電波は、外見がよければ「近寄り難い人気者」ってことにされる。 　 　社交的で頭がよくて顔も良かったら生徒会役員になるし断るなら風紀委員に属する。いま、スマホをいじってるニワトリとか、ヤンキーでも根暗でも電波でもない。けれどたった一人の人間を追い続けてるせいで「近寄り難い孤高の風紀委員」なんてものをしている。 　こっちをチラチラ見ているから手を振ってみる。無視された。淋しい。 　 　気絶させたので起こすためにお供の三人に協力してもらっている。ちなみに食堂の入り口近くの街頭下だ。ニワトリ以外も食事を終えた生徒たちがチラ見してくる。 　 　ヘルメット着用しているけれど大柄というか、身体ができている感じの三人は大人組だと思っていいんだろうか。 　三人ともが教師なら、転入生を蹴り飛ばしてるのは大問題だよね。もみ消し余裕ですから、お好きにどうぞですか、そうですか。 　考えちゃいけないところか？ 　 　というか、三人ってもう一人は誰だろう。 　たぬポン的な人とみゃーみゃーサン的な人ともう一人は誰だ。 　詮索するとつもりはなかったのに気になってしまった。 　すらっと細長い手足と独特な蹴り方。あのヤクザキックは見覚えがあるような気がする。しきりにオレの様子をうかがうようにチラチラ視線を向けてくるその姿は馴染みがある。 　猫にゃんである。 　ただ猫にゃんがいるということは、会長死亡に王手がかかってしまった気がする。年上なのに後輩気質に懐いてくる猫にゃん。 　自分で言うことでもないけれど、猫にゃんはオレを好きすぎるから、会長をイジメそうだ。逆にへりくだってご機嫌うかがいするかもしれない。飼い主についてきたのなら今日だけかもしれないけれど、猫にゃんは組織の管轄じゃない。 　組織にも足を踏み入れているから二足の草鞋なのか二重スパイなのか気になるところ。 　 　 　スマホでゲームを起動する。 ------------------------------------------------------------------------ 猫にゃんの詳細は後で出ますが会長と違ったタイプでわんわんにデレデレ系。 わんわんとカプになりませんが、とても仲良し。