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35 あいこ連続ってあんまりないよね?

     この学園に限らず全寮制の男子校で流行させるよう、各地にサクラを仕込んでいた。その芽が出たのか、チャットルームを回ると今回の出来事に対するネタばかり。  他校生が「そんな問題行動起こすヤツ来てほしくねえわ」と発言。「ってか、転入じゃなくて不登校だったってことで、普通に登校してこられた方がいい時期じゃん」と言いだしたり、わいわい楽し気。  そして先輩から聞いた話として、別の時代、別の時期に現れた転入生の話で盛り上がる。このあたりのログは蛇さんや鬼畜眼鏡がとっていて、あとで報告が来るだろうから読まなくてもいい。  問題になるのは「そんな転入生をどうにかしてくれる人がいるならいくらまで払える?」っていう金持ちらしい考え方。    お金を払うというのは契約だ。  誰かに何かをしてもらうには報酬を必要とするのが当然。  執事やメイドが当たり前で、食事は待っていれば決まった時間に出てきて、一言口に出せば何でもそろえてくれる家に住んでいるとお金の価値を理解しない子供が出てくる。  人を使っているという意識を持つのは大切だ。使われている人間は道具じゃないのだから対価を求める。お金であったり将来的な地位であったり。  それを与えずに施しを受けるのはあってはならない。    担任教師のあたりが悪かったり、本人の頭が悪いと理解しない。けれど人にものを頼むなら、見返りも用意するべきだ。  執事もメイドもシェフだって、給料や今までの恩義があってその家にいる。無料奉仕を望むのは貧乏人の考えで恥すべきこと。これから社長や企業の重役のポストに行くのなら忘れてはならないと大人たちから教えられて子供は育つ。    特待生や成金なんかもいるけれど、大多数の人間が義務と権利の関係を骨身に染みている。    義務を全うしない人間には何の権利もありはしない。報酬を払えない依頼人は依頼人ではない。     「特待生とか特待生落ちしそうなヤツに学費免除で風紀とは別に正義の味方をさせるのってありだな」      蛇さんもそんなことを言っていた。施設上がりの組織の息のかかった人間を入学されたとしても全面サポートは無理。  だから補充要員を現地調達しなければならない。  この年代の人間が集まって揉め事が起きないはずがないし、ハメを外しやすい子供たちを管理するのは教師たちだけではできない。    組織の幹部たちがいた世代とその後での生徒の仕上がり方が違いすぎると地味に理事たちの間で話題になることは少なくないらしい。  組織の人間で戸籍を持たない底辺がいれば、表の顔がテレビで出ずっぱりの俳優だったり有名プロデューサーだったりと色々いる。    組織を抜きにして考えても、表舞台で華々しく活躍したり、ノーベル賞一歩手前の人間たちがいたりする。  なので部署によって武闘派ヤクザとタッグを組んでいたとしても欲しい人脈なのだろう。飼い主や組織に属する人間を取り込んでおきたいという思惑は今の段階で成功している。  学生であるオレなどビジネスに来ているけれど勉強させてもらっている身で愛着だってできている。何も知らずに成績だけで施設からひっぱりあげられて来たら学園に尽くす人間になるかもしれない。というか蛇さんたちがそういった思考誘導をするんだろう。  オレが卒業した後も学園は平和であるという確約できる規則作りはあった方がいい。アフターケアみたいなものだけれど料金内の仕事だ。   「そいつ、起こしてもらえる?」    ヘルメット三人組はじゃんけんをして転入生を起こした。  パーは平手打ち、グーは拳固、チョキは目潰し。昔ながらのコントのような動き。あいこが連続したけれど転入生が呻きながら起きたのでじゃんけんを止めさせる。案外この三人は仲がいいのかもしれない。  あいこ連続ってあんまりないよね?    

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