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37 こちらに責められる理由なんか元々ない。

 オレが生きていることが悪いことだと思うなら全人類は常に罪悪感を懐いてるんだろう。そうじゃなければ転入生の言い分は成立しない。  人類に広がり染み込む罪の意識。あぁ、それが原罪というやつなのか。クリスチャンじゃないからわからないけど。    オレの崇めている神様はお人好しで、優しく温かく、なんの力もないと肩を落として、はにかみを浮かべるそんな人だ。  受け入れることしかできないと口にする彼を責める人間を皆殺しにしたい。  神様が、もしオレだけしか見つけ出すことが出来なかったのだと泣いたなら、大声で自分の存在をアピールしただろう。神様は何一つ悪いことはしていないし、足りないことなどないのだから嘆く必要なんてない。  救われたことが奇跡であって、救われないことこそが普通。  オレが生きていることは当たり前の結果じゃないんだから、卑屈になったり、悲しんだりする意味が分からない。  生きてることは罪じゃない。  神様の望みだから。神様がオレを見つけて、オレを生かしてオレに生きていくことを望んだのだから、申し訳ないなんて思うわけがない。  死んでしまった兄弟は残念かもしれない。  けれど神様の行動を否定するような言動をオレがするわけない。  この先、地獄が待っていても、あのまま生ゴミと共に死んだ方がよかったなんて、絶対に思わない。だから、逆に地獄に行くことはない。  どんな困難が立ちはだかってもオレはちゃんと幸せだ。   「あー、もう!! なんだよ。反省しろよ。一人で幸せになってゴメンナサイだろ」 「そう言ったら死んだ兄弟が出来なかったこととしてドナーにならせてあげるってか? お兄ちゃんの役に立てて幸せだろうって?」    「そうだよ。だって、平等じゃない。アイツらは死んだのにケイは生きてておかしい!! オマエだけが安全な場所で守られてるなんて不平等だ」    それを言ったら転入生自身は何だっていうんだ。  自分は例外ですか、そうですか。    狂人の言い分が食堂でわめかれていたのなら、そりゃあ生徒たちは大変不快な思いをしただろう。修羅場や変わった生い立ちの人間は数多いけれど、こういった自分勝手な言い分の人間にはみんな匙を投げてる。更生とか無理だから排除。そうなるよねっていう感じ方。    でも、これで飼い主の考えが大体わかった。  今回、起こりえる件や転入生についての情報は、ゴールデンウィークに蛇さんから貰ってる。  対応は全部オレに一任されていたけれど、飼い主が出てきたからオレの意向よりも飼い主の気持ち優先。飼い主は慌てず騒がず不愉快なものをスパッと切り捨てる。  飼い主がアウトって言っていて、生徒たちも排除を良しとするなら、転入生はすでに居場所が存在しない。    目の前の転入生を含めた片方だけの血の繋がりがある人間たちは、オレや死んだ兄弟を自分の所有物だと思ってるらしい。主張はその場限りか、本心かは知らない。けれど譲歩して「殺さないでおいてあげている」というところ。内臓を差し出せば生きていることを責めないでやると言いたいんだろう。  こちらに責められる理由なんか元々ない。

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