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第2話 着ぐるみの子ぐまさん

「嘘を言う元気がまだあるというのか?」  睨むカーネの額が少年の額に触れました。  恐ろしすぎて身動きが取れない少年は震えながら涙を流します。 「おねがい!話を聞いて!これは着ぐるみなの!」 「着ぐるみ……?」  首筋を握る手の力が緩みました。そのすきに少年は力任せに距離を取ったのです。 「これは、ぼくが作った着ぐるみ。本物のクマじゃないの。ほら、触ってみて?」  恐怖に震えながら、少年はカーネの手を着ぐるみの袖に置きました。 「ほう……確かに、クマにしては柔らかすぎる」 「信じてくれる……?」 「ああ、すまなかった。この森には不幸が続いている。何とか守ろうと必死になるとどうも早とちりしてしまうようだ」 「ん……よかった」  恐怖で流れていた涙の代わりに安堵の涙が流れます。 「泣かせてしまったか」  カーネの唇が涙を辿り頬にたどり着きました。人間を慰めるのは初めてで、これであっているのか分からないけれど、なぜかこれが一番効果があるような気がしたのです。  すると、突然の出来事に動けなくなった少年の唇にカーネの唇が触れました。 「すまなかった」  恐怖に震えていた心がじんわりと温まっていくのを少年は感じていました。生まれて初めての口づけに戸惑いながらも少年の心は安堵に包まれていったのです。 「うん……あ、れ?」 「どうした?」 「髪が……」 「髪?」  全ての光を吸い込んでしまいそうなカーネの灰色の髪が、太陽に輝き銀色に輝いていたのです。 「はっ……これは……お前は……」 「色が変わったね」 「ああ、お前は……まさか予言の者か」 「んん?」  唾液に濡れた少年の唇をぬぐうとカーネは尋ねました。 「名は何という。どこに棲んでいるんだ?体に印はあるか?」 「えっ、まって、おねがい、放してよ」  目の前で色が変わった髪の毛に驚いている最中だというのに、カーネはアオの着ぐるみを剥ごうとしてきたのです。   「ぼくはアオ。森の近くのフィトに1人で住んでいるの。体の印?腰に産まれた時から痣があるけど、それのことかな?」 「痣だと?どのようなものだ?」 「バラの蕾みたいな形。自分ではよく見えないんだけど」 「見せてほしい」 「これを脱がないと見せられないよ」  今すぐにでも着ぐるみを脱いで確認させてほしいとカーネは願いました。それでも、ここでは裸になれないとアオは首を横に振ったのです。 「アオ、お前がバラの蕾を持っているというなら、信じよう。言い伝えによると、お前はこの森が必要とする存在。森の魂だ」  変なことを言い出した、とアオは思いました。そもそもこの森には迷子になって迷い込んだだけ。必要な存在だの魂だのと言われてもアオには理解できなかったのです。 「カシミロは平和を率いる蝶!そうか、だからカシミロはお前を森に連れてきたのだな!しかも子ぐまの恰好をして現れるとは茶目っ気がある!」 「ちがうって!ハロウィンだから着ぐるみを着ていたの!」

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