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第5話 火照る子ぐまさん
「はぁ……苦しい」
「大丈夫か?」
「カーネさんに触れられると、ぼく、ダメみたい」
「私が力を吸い取っているということか」
予言通りだ、とカーネは頷きました。アオが魂であるのなら、命である自分が命を与えなくてはいけません。奪うだけの関係ではなく、与え与えられる関係であるはずだからです。
それなら方法は1つしかない、とカーネは屈みました。
「んっ」
息継ぎのタイミングが分からないアオはわずかに空いた隙間から息を吸い込みます。逃げようとしてもカーネはそれを許さず、薄っすらと開いた唇の間に舌を滑りこませてきたのです。
「はぁっ、待って息できないよぉ」
アオは肩を上下させながら息を整えました。
不思議なことに先ほどまで力が入らなかった体に力が戻ってきたようです。
「お前に触れることで森が力を取り戻し、私が命を注ぎ込むことでお前に力が湧くのか」
「ん?」
「難しいか?」
「よくわかんない」
「私がお前に体液を注げば力が湧く。お前に触れていれば森の命がよみがえるんだ」
「口づけをすればいいってこと?」
「それが一番簡単だが、一番効力があるのは命と魂が交わることだと言われている」
カーネはソファーに腰掛けるとアオを膝の上に座らせました。
同じ目線で向き合うと、アオは初めてカーネの顔をしっかりと見つめたのです。
村の誰よりもカーネはきれいな顔をしていました。銀色の髪に似合う瞳は光を集めてきらきらと輝いています。
「まじわる……?」
「お前は幼いから意味が分からないか。お前の体に命、精液を注ぐということだ」
「それって大人の人がすること」
「ははっ、それは知っていたのか」
「んっ」
大人のする行為、について考えたアオは顔を真っ赤に火照らせました。誰からも嫌われてた自分には全く関係ないことだと思っていたのです。
羽のように軽いアオを膝に乗せカーネは細い腰を撫でました。着ぐるみを脱ぎ下着姿になっていることを忘れているのか、気にしない性格なのかアオは大人しくされるままに座っています。
「気持ち良いのか?」
「くすぐったいけど、ちょっと違う感じ」
「そうか」
ふわふわの髪を撫でるとカーネはアオの耳に触れました。
このままアオに命を注げば、森に色と活気が戻るはずです。しかし、今さっきまで自分の存在を理解していなかった少年を組み敷くなど許されることだろうか、とカーネは悩んでいたのです。
一度だけアオと交じり森に命を吹き込むだけでは意味がありません。
与え与えられる関係とならなければ、この森はまた色を失い、暗い現実に直面することとなります。気が遠くなるほど長い間、森で死と虚無を経験してきたカーネにとって、それは避けて通りたいことだったのです。
カーネの指が肌に触れるたびにアオの痣が火照ります。
その感覚は気持ちいいのに、触れられると徐々に体から力が抜けていきました。頭がぼーっとし出すと頬を支えられ、唇を奪われいたずらに動く舌にアオは翻弄されたのです。するとみるみるうちに力が湧いていきました。
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