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6/27(木)

バスケの試合観戦に行ってから4日。 試合後のあの長岡の笑みから何か起こると思っていたが、これと言った変化はない。 まだ4日なのでなんとも言えないところはあるが、肩透かしを喰らった感は否めない。 「首のもう全然目立たないねー。」 「うん。これならまぁ…よく見なきゃ気付かないよ。」 俺の首を見ながら、うんうん、と頷き2人で会話をする光汰と瑛二。 「しかし品行方正なお嬢様の中にも頭のおかしい子ってのはいるもんなんだねー。」 光汰の言葉に頷き、きちんとこのまま別れられそうなのかを尋ねてくる瑛二。 一瞬どう答えるか迷ったが、新しい情報を与えるとどこかで辻褄を合わせるために苦労することになるかもしれない。 長岡が言っていた通り、新しい痕は第一ボタンを外したくらいでは見えないような位置にあることは確認したし、ここは特に何も進展が無いことを伝えるのが最良か。 「いや、でももう3週間くらい会ってねーから…」 「え?」 俺が答えると同時に声を上げたのは黙って俺らの会話を聞いていた宗平。 俺らの視線に気付くとハッとしたように姿勢を正し手を振り、別の事を考えていたのだ言い焦ったように笑う。 宗平は火曜からなんだか沈んだ顔を見せるようになり、よく考え事をしているような表情をしている。 月曜に会話をした時は普通であったのに一体何があったというのか。 「なーにー宗ちゃん、恋のお悩みー?」 光汰がニヤニヤしながら腕を宗平の肩へと回し、視線の先にいたらしい女子を見つけてキャッキャッし出すが、本人は「あー、山村さんな。光汰ああいう子がタイプなのか?」とか見当違いな返しをしている。 光汰は会話が噛み合っていないのに入学後初めて見るという宗平の恋(断定)にテンションが上がりっぱなしだ。 確かに俺も宗平がアプローチされることはあっても自分からしている所は見たことがない。 俺はここに来てから3週間弱だが、既に女子数名の宗平に対する好意を目の当たりにしていたし、その内1人が告白をしたというのも知っている。 宗平は、「話したこともねぇ子と付き合えねーよ。」と苦笑いしていたが、あの子もなかなかの美人だった。 俺としては、もったいないことしてしまって、なんて思ったりもしていたが。なるほど、気になる人が既に居たというのなら納得できる話だ。 会話から察するに相手は山村さんではないようだが、一体誰なのだろう。 なんとなく、宗平の恋の相手が気になった午後だった。

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