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7/3(水) from宗平

春人が時計をしてくるのを止めた。 体育の時にヒビを入れてしまってから見るからに安い物へとグレードダウンしていたそれも、ついに付けてくるのを止めたらしい。 同時に反対の腕に付けていたアクセサリーの数々も外され、春人の腕周りは「本当はこういう姿だったのか。」と思わせるほど10日ぶりにスッキリした姿を見せていた。 突然止めたそれらの理由を聞いてみても「趣味が変わった。」としか言わなかった。 まぁ、あれはあんなにきつく締められてしまっていてはファッションと言うよりむしろ拘束具のように見えていたので賢明な判断と言えるだろう。 腕がだいぶ可哀想だった…。 と、そこまで考えてハッとした。 拘束…? 彼女ではないという裕大の発言…笑い… 体を見せない春人 異常に見える痕… 全てのピースが嵌っていく音が聞こえた気がした。 だがこれは…春人に確認をしても良いような内容なのだろうか…。 答えが出ないものだから詮索するのはもう止めよう、と考えていた所に降ってきた確信的答え。 だが、それを手に入れたにも関わらず、どうしたらいいのか分からないままなのがもどかしい。 「キャンプしたいーキャンプしたくて禿げるわー。」 「禿げれば?」 「ひど。」 期末テストのために教科書に目を落としながら応えた瑛二の返しに、机にうつ伏せるように貼り付いていた光汰が静かなテンションで顔を上げる。 そのいかにも「思わず出た」と言わんばかりの反応に同じく教科書を見ていた俺も笑ってしまう。 「川遊びしたいーバーベキューしたいー女の子と話したいぃぃ!」 「光汰。この学校も生徒の半数は女子で、それでも女子と話せないのは環境じゃなく光汰の問題だってことは知ってる?」 正論すぎる返しに打ちひしがれる光汰を笑いながら春人が「キャンプなんかしたことないな。」と呟いた。 聞けば両親が会社経営のため多忙だったことと、母親が大の虫嫌いだったせいで野外での思い出が極端に少ないようだ。 それを聞いた光汰は、チャンスを得たとばかりに「いやーこれはキャンプ行くしかないっすなー。」と言いながら俺らの肩に手を回す。 「じゃあどうする?夏休みがあと2週間後だからとりあえず夏休み入ったら行く?」 意外にもそう切り出したのは瑛二だった。 反対していたようだが"春人の思い出作り"というワードに釣られたのか、面倒見良く計画を立てていく。 そうしてあれよあれよと言う間に夏休み開始後すぐにキャンプに行くということが決まった。 俺もキャンプなんて久しぶりだし、初めて行く春人は嬉しさが顔から滲み出まくっている。 それを見る光汰と瑛二もなんだか嬉しそうだ。 膨らむ夏休みへの期待により、俺は春人の秘密についての追求はこれ以上しない方が良いのではないかと考えだす。 秘密は暴かれたくないから秘密にしているのだ。 しかし…性的事柄に関する秘密というだけでこんなにも興味をそそられてしまって…。 理想的な交際だのセフレ持ちがどうのと考えていたがやはり俺もただの男だなぁ、と自分自身に呆れながら響いた予鈴で席に戻る。 …しまった。次のテストの勉強が結局ほとんどできなかった。

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