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7/22(月) 2
光汰と出かけた散策も何か特筆すべきことがあったかと言えば、明らかにヤバそうなキノコを見つけたことくらいか。あとは少し地形が分かったので各ポイントへのルートがきちんと頭に入ったくらい。
来た時に通った深い川の上に架かる橋からテントへの近道も見つけたが、整備されていないけもの道のようなものだったし通る機会があるとは思えない。
テントに戻ると瑛二と宗平が既にバーベキューを始めていた。
「おかえり。ちょっと前から始めてるよ。」
はい、と俺たち2人の皿と箸を手渡される。
至れり尽くせりでなんだか申し訳ないが、まぁ俺たち2人も"大人しくしている"という役目を果たしたのだと納得させて席に着いた。
暫く4人でコンロを囲み他愛もない話をしていると「あのー…」と声をかけられた。
声のした方へ目を向けるとそこには見知らぬ女の子が3人…いや、先程光汰が声をかけられずにいた子達だ。
何か困り事だろうかとキョトンとしていると、俯きがちに宗平の様子を伺うようにしていた子を庇うように別の子が前に立ち、溌剌とした声で一緒に食べないかと提案をしてきた。
彼女たちの話ではデザートばかり多めに持ってきてしまったので処分に困っており、肉や野菜ももちろん持ってきているので、どうせなら一緒にバーベキューを楽しみたいとのことだった。
「ぜ、ぜひとも〜。」
そんな彼女たちに光汰が引き攣った笑みを浮かべながら答える。
顔こそ彼女たちの方に向けられているがその目は地面を睨んでおり、一見すると心底嫌だが仕方なく頷いているように思える。
だが実際は、光汰は女の子への憧れが人一倍強い分いざ目の前にするとまともに話も出来ないくらい緊張してしまうというだけ。
瑛二も宗平もそんなことは分かっているので本当は一緒にコンロを囲みたいと強く願う光汰のために、俺たちは彼女たちと一緒にバーベキューをすることになった。
初対面ではあるもののそれなりに楽しんでいると俺らに提案を切り出してきた女の子、里沙 ちゃんが暑さの中長袖を着る俺の異様さが目に付いたのかその理由を尋ねてきた。
どう答えるか考えあぐねいていると宗平が「春人、この間大きな怪我して。」と助け舟を出してくれた。なに、イケメン。
「そう。結構エグいから見せらんねぇの。」
宗平のサポートに感謝しながら言葉を続けると里沙ちゃんは怪我の状態を想像したのか眉を寄せ、俺の腕をさすってきた。
その行為に不覚にもドキリとしてしまう。
そういえば、里沙ちゃんも他の2人とは違って長袖を着用している。下はショートパンツを履いているため日焼けを気にして、というわけではなさそうだ。
「里沙ちゃんも長袖だね。」
「あぁ。私も春人くんと同じ。私はバイト中にやっちゃって…結構派手にやったし包帯ぐるぐるだからさー。」
俺の問いに里沙ちゃんは自身の腕を指差しながら理由を語る。
女の子だから当然人に見せる部位のことは気になるのではないかと思うが本人は努めて明るい。
「あ、ねえ。春人くん今バイトしてる?私のバイト先今忙しくて短期バイト募集してるんだけど、良ければ一緒にやらない?」
「!や…やる…!」
提案してきた里沙ちゃんの声に俺より早く答えたのは…熱中症を疑うくらい顔を真っ赤にさせた光汰だった。
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