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7/22(月) 4

顔を青くした里沙ちゃんが走り込んできたのはそれから暫くしてのことだった。 「たす…助けっ…!こう、た、くんが川に!!」 興奮気味の彼女の言葉は息切れもあり途切れ途切れで、単語を拾うのがやっとだったがそれを聞いた俺の足は既に走り出していた。 が、俺の足は速くなく、後ろから来た宗平にすぐ腕を取られてしまう。 「春人!まずは里沙ちゃんの話を…」 「来る時来た橋!あそこから飛び込んだんだ!」 そうだろ!?と里沙ちゃんの方を見ると彼女はあの単語だけで察した俺に驚きながらも必死に頷く。 それを見て走り出したのは瑛二だ。だが… 「そっちじゃない!こっちに近道がある!」 再び走り出した俺を追うように宗平と瑛二の2人が続く。 地図を読み込んでおいて…昼間に光汰と散策をしておいて良かったと心の底から思いながら昼間確認した橋への近道を進む。 街頭も無いそこは明かりから離れたばかりの目には少し厳しかったが月が明るかったお陰で無事に橋へと辿り着いた。 橋から身を乗り出し下を覗くが光汰の姿は見えない。 川沿いを走るような道は無く、釣り場のある場所まで下ってから川に入らないと恐らくここ周辺を探すことはできないようだが、釣り場から川を登ってくるのに一体何分かかるだろう。 もしかしたら今も光汰は水底に――… ゾッと背筋を嫌なものが走る。 だがその時、月に照らされた少し下流の浅瀬らしき場所に、横たわる人影を見つけた。 「光汰!!」 叫ぶと、それに反応するように極めてゆっくりな動作で光汰が少しだけ動くのが見えた。意識はあるようだとホッと息を吐くが決して安心できる状況ではない。 どうする?光汰が横たわる浅瀬は崖に囲まれていて陸から辿り着けそうな道はない。やはり川を登るしかないのか…。 そう考えを巡らせていると隣から何かが飛び出した。 え?と思い顔を向けるとそこには脱ぎ捨てられた瑛二の衣服。次いでドボンッと大きな物が水に落ちる音がした。 まさか…と思い川を覗くと水面から浮上してきた瑛二が流れに沿って川を下るのが見え、ちょうどそのタイミングで後ろから里沙ちゃんがテント用ロープを片手に走ってきた。 「あの、これ、何か使えないかなって…っ」 そう言ってロープを差し出す里沙ちゃん。 確かに役に立つかもしれないが、一体次の行動はどうすれば良いのかと川に飛び込んだ瑛二を見る。 不用意に飛び込めば二次災害を招くかもしれないと二の足を踏んでいた俺を笑うかのように、無事に光汰の元へ辿り着いた瑛二が状態を確認してから何か拭くものをくれないかと要求してくる。 すると自分の服を脱いだ宗平がそれを里沙ちゃんのロープに括り付けだした。 何をしているのかと聞くとロープに括りつけたそれを橋を使って振り子にしてロープごと放るのだという。 それならば吸水性の悪そうな宗平の半袖より俺の長袖の方が絶対に役に立つと俺も服を脱ぐ。 月明かりだから大して痕も目立たないだろうと思ったが、案外ばっちり見えているらしい宗平と里沙ちゃんが目を丸くしていて…少し恥ずかしくなる。 ていうか宗平…痕があることは話してあったんだからそんなまじまじと見ないでくれ…。 そうしてさすがバスケ部と言うべき…いや、関係ないか?とにかくナイスコントロールで放られた服を受け取った瑛二が光汰の体を拭いているのを見ていると、程なくして里沙ちゃんが呼んだ救急車が来た。 釣り場から上がってきた隊員に連れられ救急車に乗せられる光汰。 どうやら低体温症らしい。 付き添いには瑛二と里沙ちゃんが。 そして残された俺らは里沙ちゃんを追ってやってきた女の子2人にお礼とお詫びを言ってテントに戻った。

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