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7/28(日)

「え?どういうこと?え?告白?」 下宿先からほど近いカフェの中、俺の向かいでアイスティーを飲んでいたマイマイが若干吹きこぼす。 急いで口元を拭うマイマイにペーパーを差し出す俺は、その問いに対するはっきりとした答えを持ち合わせてはいない。 キャンプから帰ってきた俺に告げられた長岡の「目的」というのは衝撃的なもので、俺はそれに質問するでも言い返すでもなく放心状態のまま部屋を後にした。 それから5日。 長岡とは特に言葉を交わしていない。 「えー裕大くんが本気で春人のこと好きなら俺出てかない方が良いじゃん。」 「いや、出てきてくださいよ。俺を助けてくれるんじゃなかったんですか。」 オネエ言葉を若干抑えて話すマイマイに違和感を覚えながら引き止める。 えー、でもぉー、とか言いながらストローを回しガシャガシャと氷を掻き混ぜるマイマイ。 「これが告白だなんて思えませんよ。支配欲バリバリで怖くないですか?しかも結局のとこ何がしたいのかよく分からないままだし…。」 至極当然のことを言ったつもりだがマイマイの態度は変わらない。 マイマイと言えどやはり意中の人が別の誰かを見ている、というのは辛い状況なのだろう。 普段は勝気なマイマイもこうしていると1人の恋する乙女…乙女?……恋する人間に見えてくる。 きっと最初に俺に声をかけてきた時だって余裕ぶってはいたが相当な勇気だったに違いない。 まぁ大前提として長岡は、たぶん、本当に、絶対、俺のこと好きなんかじゃないと思うが。 だが、完全に敗北モードのマイマイはフォーリンラブ計画のモチベーションが急降下したようで、計画の中止を提案してくる。 いやいや待て待て。そんなことされては俺が困る。 どうしたものかと思案した俺の視界に入ったのは店の壁に貼られた花火大会のポスターだった。 これだ!と見た瞬間に思う。 花火に来てる多くのカップルを見たらまた恋がしたくなってやる気が出るんじゃないかと思った俺はマイマイを花火に誘う。 「は?なんで春人と。」 当然マイマイは納得していない様子だったが懸命に説得し、なんとか花火の予定を取り付けた。 とりあえずは安心だろうと、ほっと息をついてから時計を確認して席を立つ。 「じゃあ俺そろそろ行きますね。」 俺がそう言うとマイマイは自身の腕時計に目を向けて自分はバイトまでまだ少し時間があるため店に残ると言った。 店外に出てガラス越しにマイマイに手を振ってから宗平と待ち合わせている駅へと向かう。 今日は宗平と瑛二と里沙ちゃんと俺、4人で光汰の家に行くことになっている。

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