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7/28(日) 2

宗平と共に光汰の家に行き、部屋へ案内されるとそこには里沙ちゃんと瑛二が既に居て、なんだか空気が重いな、と思いながら座ると里沙ちゃんが突然俺らに頭を下げてきた。 「今回のことは、全部私が引き起こしたことです。本当にすみませんでした。」 訳も分からず宗平と瑛二の顔を見るがやはり2人も何も聞いていなかったようで俺と同じような反応をしている。 「俺からもごめんね。いっぱい迷惑かけたしキャンプぶち壊しちゃって…。でも助けてくれて本当にありがとう。あとこれは里沙ちゃんのせいじゃないんだー。俺がテンパっちゃって…。」 光汰が苦笑いしながら言うと里沙ちゃんの下げた頭を起こさせる。 「そもそもなんで川に飛び込んだの?」 そう瑛二が尋ねたことで、瑛二でさえまだ事情を聞けていなかったらしいことが分かり、驚く。 光汰に目を向けると光汰は里沙ちゃんに「本当に話していいんだね?」と確認を取っていた。 そして「どこから話せば良いのかなー…」と前置きを置いた後、ゆっくりと話しだす。 「まず、川に飛び込んだのは完全に俺がアホだったから。里沙ちゃんに『私のために危険な目に遭う覚悟あるの?』って言われてー。俺も必死だったからなんか危険なことやってやろって思っちゃって。ちょうど橋の上で話してたからじゃあ飛び込みだー…みたいな。」 あはは…と乾いた笑い声を出しながら頭を掻く光汰に、瑛二が眉間にすんごい皺を寄せている。 分かるよ。うん。 「『危険な目に遭う』って…なにそれ?」 宗平が里沙ちゃんに問うが、それに答えたのは光汰だった。 「里沙ちゃん。ストーカー被害に遭ってるらしくて…。腕の傷もその子に付けられたって。」 え!?と驚き里沙ちゃんに目を向けるが……ん?今、『その子』と言ったか? 「ストーカーっていうのは……私の元カノなの。」 俯いたままそう告げた里沙ちゃん。 元「カノ」?カノってことは…彼女?てことは…女の子同士で付き合ってた? 驚いて言葉も出ない俺。 宗平を見ると俺と似たような…いや、俺以上に驚いた反応。 反対側の瑛二は…無表情。いや、無表情だけどこれめっちゃ驚いてる。よく見たら目の焦点合ってない。 話によると里沙ちゃんは高校時代に告白され、物珍しさで付き合っていた1個下の女の子がいたらしい。 だが、受験期を迎え将来に対する漠然とした不安を抱く中、彼女との付き合いは更にそれを加速させていた。 そして彼女に一方的に別れを告げたところ、彼女はストーカーになってしまったのだという。 最初は大した被害もなかったため無視を決め込んでいたが、遂に先日。バイト終わりに刃物を持った彼女に切りつけられるという事件が起こってしまったらしい。 そしてそんな時に出掛けたキャンプで出会ったのが俺ら4人。 俺の顔が好みだったこともあり、「ストーカーへの牽制」「俺と親密になれる」「守りたい女子アピール」ができると俺をバイトに誘ったのだという。 そして、光汰が間に入ってきたことを疎ましく感じた彼女はあの夜、光汰を呼び出して、危険を侵す覚悟もないくせに近付くな、と警告しようとしたのだという。 だが里沙ちゃんの予想に反し光汰は川に飛び込んでしまった…。 …これがあの日起きた出来事の真相だという。 光汰もストーカーが里沙ちゃんの元カノだったという点は退院後聞いたらしく、その時は驚きを隠せなかったという。 とまぁ事情は全て分かった訳だが…とりあえず…全て聞いた後に1番に感じたことは、あの腕をさするなどの行為の影にそんな思惑があったことがショックだったということだ…。

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