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7/28(日) 3 from宗平
光汰の家からの帰り道を春人と2人並んで歩く。
光汰は結局、退院した翌日にも関わらず里沙ちゃんのバイト先へ面接に行っていたようで、一昨日から働き始めているらしい。
本当に今回ばかりは光汰も頑張っているようで、毎日里沙ちゃんを家まで送り届けたりと着実に距離を縮めているとのことだ。
里沙ちゃんも光汰の真っ直ぐすぎる姿勢に感化されてきているようで、自分は最低の人間だが光汰といると心が洗われるようだ、と話していた。
あの2人が付き合うのは時間の問題だろう。
そこでふと里沙ちゃんの元カノについて思い出す。
里沙ちゃんの元カノは…ストーカー行為をしてしまうくらい忘れられない人に彼氏ができたら、一体どう考えるのだろう…。
里沙ちゃんは同性愛者ではなかったらしいし、元カノは全てを覚悟し付き合っていたのだろうがそれでも心が追い付かないだろう、と顔も知らないその子の心中を思い、苦しくなる。
『なんだか面白そうって、本当にただそれだけで付き合い出したの。実際は…そんなこと全然無かったけど…。』
俯きながら語った里沙ちゃんのことを思い出す。
付き合っている間に愛しさは芽生えたがそれ以上の感情が当時あったかと聞かれると恐らく無く、彼女といるのは楽しかったし安らいだ。ただ、彼女との未来を選ぶために何かを失う覚悟は、年齢のこともあるだろうがそれを差し引いたとしても到底持てなかった…。
そう言って、当時の軽率だった自分の行動への後悔か、彼女の好意にどうあっても応えられなかった漠然とした虚しさか、涙を流していた里沙ちゃん。
里沙ちゃんのしてきたことは確かに非難の対象になるだろうが、それでも里沙ちゃんが苦しんで、どうしようも無かった感情を俺たちに吐き出している姿は悲しく映った。
ストーカーになってしまった彼女と、それに対抗するように彼氏を作ろうと躍起になり春人を利用しようとした里沙ちゃん…。
ふぅ、と息を吐き隣の春人を見る。
春人は…今何を考えているのだろう。
案外単純だから自分が利用されそうになっていたことにショック受けてるだけだったりして…と考えるが、あの告白を聞いて最終的に思い至るのがそんなものであるはずない、と思い直し1人小さく笑う。
するとそれが気になったのか春人が「なに?」と不審そうな顔をしてこちらを見た。
「いや、思い出し笑い。それより春人。花火大会の待ち合わせ、6時に駅で良いか?」
質問を軽く流して今週末行くことになっている花火の詳細について話をしようと切り出すがそれを聞いた春人は少し驚いた表情だ。
「え?なんの話?」
「なにって…8月3日、花火大会行くことになってるだろ。あ、優奈ちゃんもう1人女の子連れてきてくれるらしいぞ。」
春人は更に目を丸くし、自分が行くと言ったかどうかの確認をしてきた。
もしかして別の予定を入れてしまったのかと思っていると春人が理由を明かしてくる。
「俺も1人連れてって良いか?悪い。すっかり忘れてて、俺から花火誘った人が1人いて…。」
あぁ。そういうことか。忘れられてたことは少しショックだが、一緒に行けるのなら問題無いだろう。
「良いと思うけど…女の子?」
「いや、男。俺らの高校の近くに大学あるじゃん?そこの3年生で、俺の隣の部屋住んでる人の友達。」
へー…、と相槌を打った後、優奈ちゃんにラインで人数が増えたことを伝える。
聞く限りではとても距離が近いとは思えないその人が、なぜ春人と2人で花火に行くことになっていたのか…そんなことが、なぜか小骨のように引っかかった。
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