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8/1(木)

宗平から再度練習試合に出られるからと聞いたので今日は瑛二と2人で観戦に来た。光汰も誘ったのだが、今日はバイトが入っているらしい。 「宗平、前より活躍してる?」 「んー。たぶん?」 瑛二に聞かれ、確信はないがなんとなく前回よりシュートを決めようと挑む回数が増えたような気がしたので頷く。 共にルールのよく分からない瑛二と2人並んで試合を眺める。 前はよく解説してくれる女の子達がいたからなぁ、と今日は声も聞こえない程遠くに座る彼女たちに目を向ける。まぁ、聞けても長岡の活躍だけなんだが…。 今回も長岡はほぼルールの分からない俺の目からも明らかなほど活躍しており、情報が全く入っていなかったらしい対戦校やその応援に来たと思われる生徒たちをザワつかせていて、女の子なんかちらほらと黄色い声を上げ始めてる。見る目ないな。 そんなことを考えていたら笛が鳴り宗平がベンチに戻ってきた。 「宗平おつかれー。飴ちゃんいるか?」 「飴ちゃんて。大阪のおばちゃんかよ。」 観客席の下に来た宗平に声をかけ、掲げられたその手を狙うように飴を落とす。 「もうこれで終わりなんか?」 「わかんね。コーチの采配次第だけど俺まだシュート決めてねーし、出てえよなぁ。」 やはりシュートを入れようと前回よりも意気込んでいたのか。 もしかして前回グラウンドで言ったことを実現しようとしてくれてる?とちょっと期待して、1ヶ月以上も前にただの友人とサクッと交わしたあんな言葉をまだ覚えているわけないか、と考え直す。 俺がそんなことをしていると瑛二が宗平に声をかけた。 「宗平って活躍してるの?」 聞かれた宗平は焦ったような顔。 「え?してねぇ?自分では前回よりずっと良い動き出来てると思ってたんだけど。」 「いや、前回のこと知らないし。」 よく分からないまま見てることに飽きてきたらしい瑛二が少し冷たく返すのを横目に見ながら、俺は少し安心する。 そうか、していたのか。俺も気になってたんだけど聞かなくて良かった…。 「春人も活躍してないと思ってた?」 「えっ俺!?…え?…いや!?」 疑うような顔をした宗平に突然話を振られたものだから上手く答えられなかった。 そんな俺の返答を聞いた宗平は眉間に皺を寄せてコートを見遣る。 「これまじでシュート決めねぇとまずいな…。」 そう一言ボヤいて汗を拭った宗平は、その後再び試合に戻り2回ほどシュートを決めることに成功していた。 「春人との約束守ったろ。」 試合後にそう言って笑った宗平。 それは約束なんて大それたものではなかったが、意外にも宗平もあの日のことを覚えていてくれて、しかもそれを実現してくれたことが嬉しくて…満足そうに笑う宗平に俺も思わず破顔した。 宗平といると、俺も青春の中で生きているような気分になれる。 それに今日は長岡に絡まれることも無かった。 なんて素晴らしい日なんだろう。 宗平がゴールにボールを運ぶのと同時に俺の幸せも運んできてくれたのかもしれない、とか変なことを考えるほど、俺はすごく気分が良かった。

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