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9/2(月)

「とりあえず今日授業ある分だけはやってきたんだよね。」 始業式から戻ってきて席で話をしていた俺と宗平の元へ真剣な表情でやって来た光汰が夏休みの課題をバンッと机の上に乗せ、言った。 すると後ろからやって来た瑛二が光汰の頭を思いっきり叩く。 「だから『やりなよ』って先週言ったじゃん。」 「無理だよー。1週間で終わる?終わんないよ。だから夏休みは長いんだよ!」 どうやら光汰は瑛二に警告されたにも関わらず夏休みの課題が終わっていないようだ。 「白紙のまま出したら。」 そう切り捨てる瑛二と「見せてください瑛二様。」と泣きつく光汰。 やばい。瑛二まじでオカン。 「見せてはあげらんねーけど手伝ってはやれるよ。」 そのあまりに必死な姿に見かねてそう言うと光汰は目をキラキラさせながら俺の手を握った。 瑛二が隣で「春人!」と怒ってるけど、見せるわけじゃないから、と苦笑いして返す。 「手伝いって何すんの?」 「とりあえず最初は光汰にやってもらって、つっかえた所あったらヒントあげてこっかなって。」 宗平からの質問にそう答えると光汰がショックを受けたような顔をしてこちらを見てくる。 思った以上に俺の手助けが微力だったようで、「絶対期限に間に合わないよー。」と打ちひしがれているが…無いよりマシと思ってくれ。 「こういうのは結局自分でやんないと力になんねーから。」 「真面目ちゃんかよ。けっ!」 「手伝うのやめる。」 「春人様の言う通りです。すんません。」 光汰とそんな言い合いをした後、今日は短縮授業であるため学校終わりに俺の部屋で課題をやるということで話がまとまった。 なんだかんだで瑛二と宗平も来るようだ。 「ほら、ここはさっきも使った公式で…」 「あ?あぁー…あーはいはい…」 部屋に着き早速課題をしていたが、1時間半ほどすると光汰の反応が単調になり始め、明らかに疲れてきていることが伺えた。 「少し休憩するか。」 「え?やるよー。まだまだいける。」 あまり良いとは言えない進捗度に焦っているのか休憩を取ろうとしない光汰。 だが、6割方は既に自力で終えてあったようなので、とりあえず明日授業がある分に関しては提出に間に合うだろう。 「適度な休息も必要だろ。」 「いや。できるから。」 「…能率下がる。」 「できるから!」 「光汰!」 そうイラついて言うと横から「うぉっ、びっくりした。」と扉を開け入ってきた宗平の声が聞こえてきた。 少し飽きてきたらしく、下宿内を見て回ってた宗平と瑛二は扉を開けた途端聞こえてきた俺の大声にかなり驚いたようである。 俺も初日、長岡の母親に「主人がここは男の子用の下宿だから思いっきり部屋で騒げるようにって作ったの。春人くんも酒盛りなんなり好きにしていいわよ。あと4年はお預けだけどね?」と冗談交じりに言われて結構驚いたことを思い出す。 まぁ、おかげで…長岡と俺の関係は現時点ではマイマイにしかバレてないので、本当に有難いのだが。 「どうした?ケンカ?」 尋ねる宗平に光汰が休憩を取りたがらないことを伝えると瑛二が光汰の前に膝をつき休憩するよう促す。 すると俺の時とは打って変わって素直に頷く光汰。 ……おい。

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