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9/25(水) 2
瑛二と光汰の姿を見ていると宗平が俺の横に来た。
「里沙ちゃんに用事でもあった?」
「いや。ただ付き合いだしたんだし、誘ったんかなーって思っただけ。」
「…そっか。」
そう言って宗平は少し俯いてから再び横目に俺を見る。
「春人は…誰か呼んでんのか?舞山さんとか…。」
なんでマイマイ?と思ったが、考えてみれば俺はマイマイ以外に学外の友人がここにはいないのだった。
「いや?マイ…舞山さん忙しいのか何なのか優奈ちゃんとの一件から全然会ってくんなくて…俺も早く会いたいんだけどさ。」
あ、しまった。フォーリンラブ計画が頓挫してるもんだからうっかり最後の言葉を口走ってしまったが…特に怪しくはなかったろうか?
心配になりチラリと横を見上げると、珍しく冷めた瞳をした宗平と目が合った。
思わずギクリと背筋が伸びる。
「…なに?」
なんとなく重く感じた空気を和らげたくて無理矢理に笑顔を作って聞くが、きっと引き攣っているに違いない。
「ずっと気になってたんだけど…春人と舞山さんは何がきっかけでそんな仲良くなったんだ?」
「えっ…えぇー…?お、ぼえてねえなぁ…。」
まさかヤッてる声を盗聴されたから、なんて言えるはずもなく、ヒシヒシと感じる横からの視線を無視するようにひたすらに宗平とは逆サイドにある壁を見つめる。
ていうかずっと気になってたの?気にしなくていいよ!
「…」
暫く黙った後に普段の雰囲気に戻った宗平が笑顔で「色付けやるか。」と言って新聞紙の上に木材を並べていく。その態度に違和感を覚えたが、この話題を続ける気は無いので俺も宗平に倣うように木材を並べてスプレーを手に取った。
「……。」
光汰の課題を皆でやったあの日。
次の日に顔を合わせた宗平はいつも通りで、俺は心配していたことは何も起こらなかったのだと安堵していたのだが、あれから宗平は…勘違いかもしれないが、俺自身のことについて尋ねてくることが増えたように思う。
そういえばこの間の日曜日は長岡に襲われこそしたが手首の薄い痕以外に特に目立つものはなかったので幅のあるアクセサリー1つと時計のみを付けて登校してみたのだが、宗平はその下が気になったようであった。見せたがらない俺に特に深追いはしてこなかったが、前に同じように手首周りを隠していた時と比べるとやはり変化を感じる。
まさか…あの時の長岡の態度で遂に勘づいてしまったのか…?
不安と共に宗平を見つめると俺の視線に気付いた宗平が顔を上げる。
「どした?」
気付いていて…こうして普通に接してくれるのなら、今はまだそれに甘えたい…。
なんでもない、と頭を振った俺に宗平は「そうか?」といつものように微笑んだ。
その笑顔の下で無理をしたように強ばる内側に、俺が漸く気付いたのは後夜祭の夜になってからだった。
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