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9/28(土) 2
体育館に行くとボールの音と共に歓声が聞こえてきた。2階の観客席に上がってコートを見ると、ちょうど先輩たちのゲームが終わったらしい所。先程俺1人で見に行くことをメールした際も時間を確認したので宗平が出るのは恐らくこの後だろう。
しかし、宗平が出るからなのか、それともそもそものバスケ部人気だからか…観客席には女子の姿が目立つ。暫くぼんやりとその姿を眺めていると突然彼女たちが大きな歓声を上げた。
慌ててコートに目を向けるとそこには見慣れすぎた2人の姿が…。
宗平と…長岡だ。
宗平が俺にゲームを見に来てほしくないと言っていたのは長岡が対戦相手だったからなのか…。
宗平は夏休み明けの一件で俺と長岡の異様な関係を察したようだし、俺たちを近づけてはいけないと思ってくれているのかもしれない。
先に俺に気付いたのは長岡。少し意外そうな顔をしていたが一瞬宗平の方に視線をやると再び俺を見て笑った。いつもの毒気を、微塵も感じさせない笑みで。周りにギャラリーが多いからだろうがひたすらに気持ち悪い。そんな笑みを浮かべるくらいなら笑うな。こっち見んな。
そしてそんな長岡を見ていたらしい宗平がこちらに視線をやる。それは少し癪でないようなそんな顔で、俺はいつもの宗平とは違うその表情にまた焦ったように笑ってしまった。
審判らしき先輩が出てきて宗平と長岡にじゃんけんをするよう促す。たぶん先攻後攻を決めるものなんだが、それですら負けないでくれと願ってしまう。そしてじゃんけんに勝ったらしい宗平がボールを受け取って長岡と向かい合った。
「…」
ガヤガヤと会話をする周囲とは違って宗平と長岡…そして俺を囲む空気はなんだかピリリとしていていて、それが開始の笛の音と共に声援に掻き消されていく。
ボールを奪われることなくシュートを放つところまで辿り着いた宗平だったが、長岡に阻まれたことで体制が崩れ、ボールはゴールリングに弾かれて虚しく落ちていく。それを受け取った長岡がまた似つかわしくない爽やかな笑みを浮かべて宗平に話しかけている。どうせ「惜しかったな。」とでも言っているんだろう。
そして次は長岡の番。遊ぶようにボールを弾ませて笑いながら宗平を見ていたかと思ったら流れるような動きで宗平を躱してボールを放つ。静かにゴールネットを通り抜けて行ったボールを皆が見ていた。
瞬間、湧き上がる歓声と女生徒の黄色い悲鳴。なんだよ。みんな長岡派か!どいつもこいつも!と思ってたらその後シュートを決めた宗平にも盛大な声援と拍手が上がる。
そうか。皆単純にゲームを楽しんで見ているのか…。
宗平派だの長岡派だの言っているのは俺だけで、そしてこのゲームをこんなにも息の詰まりそうな想いで見ていたのもきっと俺だけだった。
それでもやっぱり心の底から宗平には負けて欲しくなくて、精一杯声援を送った。
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