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9/29(日)

宗平の元気が戻らない。 昨日は結局お化け屋敷に行っても8組の本気を感じさせる『メイド執事喫茶』に行っても宗平の反応はイマイチ。 そんなに長岡に負けたことがショックだったのかと思い、元気を出してもらおうとまたボウリングに誘ってみたがあっさり「明日も文化祭だから。」と断られてしまった。そりゃそうだ。 はぁー、と溜め息をついて流れて行くパチンコ玉を眺める。今日の11時から12時までは俺は当番に立っていて今は俺が担当する時間内の最後の1回を流しているところ。結構うまい感じに軌道に乗ったそれはコースを外れることなく順調に流れていき、現在、全体の4割を流れ終えた所だ。仕掛けが動く度に観客は「おぉ〜!」と歓声を上げていて、こんな地味な出し物でも案外楽しんでもらえているようでホッとする。 その後も様々な仕掛けを動かして流れていったパチンコ玉だったが、全体の8割に差し掛かった頃、ついにコースを外れて虚しく床に転がっていってしまった。 観客と当番の中から「あぁー」と声が上がる。もちろん俺からも。 当番の間に4回程流すチャンスのあるパチンコ玉だが、俺は結局1回もゴールまで流れきるのを見られなかった。 本番でも上手くいかないものはいかないなぁと思い、他の当番の生徒に成功率は現在どれほどなのかと尋ねると、昨日から1度も成功しているのを見ていないと言われた。まじでか。 まぁ宗平は成功しないのを見るのも楽しいと言ってくれていたので良いだろうと思いながら次の当番達のために仕掛けを組み立て直す。すると後ろから声をかけられ、振り向いた俺は目を見開いた。 「マ…マイマイ…と、え?なんで…優奈ちゃん…?」 思ってもいなかった組み合わせの2人が俺の前に現れた。 「ちょっと事情があってー…。春人この後話せない?お昼でも食べ行こうよ。」 苦笑いしながら言ってきたマイマイにあと10分ほどで再組み立ても終わるので時間ができることを伝えるとその後で少し話そうと誘われた。 ちょうど宗平と光汰がこの後当番に入ってしまうし、瑛二は自身が所属する書道部の方の当番があるからと今日の午後は一緒に回れなくなってしまっていたので都合が良かった。 「宗平くん次当番なの?それなら私ここ残ろー。」 そう言い出した優奈ちゃんをマイマイが咎める。 「優奈お前まだそんなこと言って…」 「うっさいな。目の保養くらいしたっていいでしょ。瞬はそのちっこいの連れてさっさとどっか行け。」 「あーもう。お前はほんとに…」 優奈ちゃんの口調は相変わらず乱雑だが2人の間に流れる空気は以前のものとは全く違っていて、その変化に首を傾げてしまう。…ていうか俺「ちっこい」って言われた。一応平均身長はあるんですよ。マイマイやら宗平やら長岡やらが高身長なだけで。 「じゃあ春人。俺そっちで待ってるから終わったら声かけて。」 そう言ってマイマイが教室から出ていったので気持ち早めに組み立てを終わらせて後から来た当番の宗平と光汰にバトンタッチ。 マイマイが来ているからこの後一緒に行動できないかもしれないことを伝え、光汰の横で浮かない顔をした宗平をチラリと見遣る。 「…なぁ光汰。宗平まだ昨日のゲームのこと落ち込んでるみたいだからさ…ちょっと元気づけといてやってよ。」 「え?昨日のことが原因なの?宗ちゃんってそんな引きずる性格かなぁ?まぁ、できることはやっとくよー。」 午前中から来てくれていた里沙ちゃんが当番の間も教室にいてくれることになったので、今日はとても機嫌のいい光汰に宗平を任せ、教室の外にいたマイマイに声をかけその場を離れた。

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