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9/30(月)

「すげー腫れてる。」 目を開けると目の前に俺の頬を撫でる長岡がいた。 今日は文化祭の振替休日で、俺は今朝、朝食こそ食べに起きたがその後は何もする気が起きなくて部屋に戻りなんとなくベッドに入ってからまた泣いた。 泣いて泣いて…泣き疲れて寝てしまった俺は、どうやら部屋の鍵をかけ忘れていたらしい。 「笠井となんかあったか?」 どうせまた全て知ってるんだろうに… とぼけた風に聞いてくる長岡を無視するように背を向ける。 「おい。」 苛立った声を上げて長岡が俺の服の中に手を入れてきた。 「やめっ…、今はそんな気分じゃねぇ!!」 「へぇ。いつもは"そんな気分"だったのか。」 言われて初めて自分の放った言葉に気付き、赤面する。 なんで…こう、いつもいつも…。 「っ……もう…ほんと嫌だ…。」 震える声でそう言い、また涙が溢れてきそうになる目元を枕に押し付ける。 「なんで…俺が宗平を突き放さなきゃならないんだよぉ…。」 昨日の宗平の姿を思い出して、また胸が詰まりそうになる。あんなに苦しそうにする宗平を…それでも俺は拒絶するしかできなかった…。 「春人が自分で笠井を遠ざけたんだ。」 うつ伏せる俺の髪を撫でながら長岡が落ち着いた声音で言ってくる。 こうなるように仕向けていただろうに、それでもわざとらしく確認してきた長岡にいい加減腹が立って体を起こす。 「そうだよ!お前がそうさせたんだろ!!」 声を荒らげて怒鳴ると、俺の怒りなど届いていない様子の長岡が俺の背に手を回し、ベッドに押し倒し唇を重ねてくる。 「んぅっ…やっ…!」 辛くて、悲しくて、普段以上に長岡の胸板を強く叩いて離そうと試みるが、長岡はきつく抱きしめることでそんな俺から腕の自由を奪う。 酸欠になるかと思うほど長く交わされたキスの後、長岡は背に回していた腕を解いて俺の目元を優しげな手付きで撫でてきた。 「上出来。」 そう一言、ゲームでもクリアしたかのように言ってきた長岡。 俺は今度こそ我慢ならなくて、長岡の体を全力で引き剥がそうとする。が、既に組み敷かれているもんだから当然敵うはずなんてなくて、俺はそのままいつものように抱かれてしまった。 長岡のモノを挿れられながら、中途半端にたくし上げられた服によって拘束された腕を目元にやって流れ出てくる涙を拭う。 そんな俺に長岡は普段は噛み付いて付けるというのに、なぜかきつく吸うことで首元に痕を残していった。 いっそ与えられるのが痛みだったのなら、幾分かすっきりしただろうに。 そう、ここにいる長岡ではなく宗平のことを思って、俺はまた泣いた。

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