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◀◀9/3(火) from宗平

昨日の…春人と裕大の間にあった妙な距離感は何なのだろう。普段の自分の生活を思い浮かべてみたが、友人と肩を組むのではなく肩を抱くなんて…俺はしないなぁ、と考えながら昨日からモヤモヤと怒りにも似た不快感を抱える胸をさする。 『残念、笠井。まだ言えねーって。』 裕大の一言は、裕大の方が俺なんかよりずっと春人に近い位置にいるのだと俺に思わせ、そして春人への不信感を煽った。 裕大を酷く睨んでいた春人の顔もまた…俺が見たことないような顔で、それが春人の良い面なのか悪い面なのかと聞かれたらたぶん悪い面なんだが…それでも俺の知らない春人を裕大が知っていることに少し焦りを感じていたし、俺には明かしてくれないことが多い様子の春人に少し悲しくもなった。 でもきっと…話してくれないのは俺がまだ話して良いような存在に春人の中でなれていないから。 それならば、俺は無理に聞き出すのではなく待ってあげるべきなんだ。 そう自分に言い聞かせて、今朝の朝練で顔を合わせた裕大とも卒なく言葉を交わし、教室に着いてからは普段の俺がするであろうやり取りを春人とした。 きっと俺の態度に違和感は無かっただろうし、春人もこうして「どんなことが有っても俺は春人から離れていかない」ということが分かったら少しは信頼して心を許してくれるだろう。 そんなことを考えて春人に笑いかけると始めは無理をしていたように笑っていた春人の笑みも、だんだんと力が抜けていった。 昼になり文化祭実行委員が置いていった紙を片手に何を書こうかと考えていると、光汰に案を出すよう促された春人が「ピタゴラスイッチ…」と呟いた。 3人で意味が分からず見つめているとピタゴラスイッチというテレビ番組でやっていた、仕掛けを自分でも作ってみたいのだと恥ずかしそうに説明された。 「…春人は…あれだよねー。無害系バカ。」 「は!?いや、成績は4人の中で1番ですけど!?」 「うん。だから成績良い系バカ。でも可愛げあるバカだから自信持っていいよ。」 光汰の言葉に反発した春人に、瑛二が畳み掛けるように自身の言葉を重ねた。 なるほど…無害系、成績良い系バカ…言い得て妙だ。 春人は頭も良いし配慮もできる性格ではあるがなんとなく抜けた印象で目が離せないのはそういうことか。当の本人は到底納得いっていないと言いたげな表情だが。 俺はペンを持ち俺たちの案はそれで決定で良いだろうと言いながら「ピタゴラスイッチ」と白紙に書き込んだ。 しかし…『可愛げある』…か。 春人をなんとなく可愛いと思っていたのが自分だけではないのだということが分かって、また少し、不快な何かが胸の中に落ちた。

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