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◀◀9/17(火) from宗平
「また付け出したんだな。」
祝日明けの春人は、手首に腕時計と幅のあるブレスレットを嵌めていて、それを指摘すると焦ったように腕を机の下へと隠す。
だが、あからさま過ぎると自分でも気付いたのか、すぐに机の上に腕を戻すと忙しなくさすって「うん。今はこれがお気に入りで…。」と言ってきた。
以前の俺なら少し不思議には思うものの特に気にすることなく流していたのだろうが、今では春人が必死に隠したがること全てが気になってしまって仕方がない。
春人の腕を軽く掴み腕時計のベルトに指を滑らせ「ちょっとこの時計見てもいい?」と聞いてみた。
しかし俺が尋ねると同時に春人は俺の腕を振り払い、また自身の行動に後悔しては顔を青くして口をパクパクと動かす。
「あ、えっと…」
「悪い。それも"ファッション"の一部だったのか。なら外せねーよな。」
以前にジャラジャラと腕周りを飾るアクセサリー類をしていた春人と交わした言葉を引用して、確認するように冗談っぽく笑って尋ねてみると春人も気が付いたのか「そう。欠かせないから。」と話を合わせてくる。
やっぱりまだダメか…。
俺が腕時計を外したがる素振りを見せた途端に離れていった春人の手。
何も掴むものが無くなったのに指をゆっくり折り曲げてそのまま拳をつくり握りしめる。
どうやって春人との距離を縮めていけばよいのだろう?
あれから春人自身のことをまず知ろうと春人の両親の話や中学以前のことをそれとなく会話に織り込んで尋ねてみたのだが、いまいち成果があるように感じられない。
それどころか中学のことに至っては「あまり思い出がない。」や「学校に友達はいなかった。」と明らか嘘だろう返しをされてしまった。
そうやって春人に近付こうとしたからこそ得られた回答だったのが、それが俺と春人との間にあるものを感じさせて余計に距離が遠退いたように感じる。
裕大は…なんか知ってんのかな…。
俺の知る限り試合後のグラウンドで春人に話しかけてきた時と、夏休み明けのあの日くらいしか2人が話しているのを見たことはないが…なんというか…なんとなく2人の間には何かあるように見える。
思えばグラウンドで会ったあの日…春人の首の痕にシャツの上から手をやって笑っていたあの時から、裕大は真実を知っていたんだ。
学校生活では何も共通点が無く親しそうにも見えない2人。
距離感の問題じゃないのか?…人柄?
また考えたって答えは出ないのに俺は泥沼へと嵌っていく。
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