60 / 207
◀◀9/25(水) from宗平
今日はピタゴラスイッチの仕掛けに使う木材の色付けをすることになっていて、試しにパチンコ玉がきちんと転がるか皆で確認した後、予め決められていた班に別れて色付け作業を始めた。
木材を手に移動した所で、里沙ちゃんが当日文化祭を見に来るのかを春人が光汰に尋ねた。惚気全開で答える光汰に春人がイラついた表情を見せると瑛二が光汰の頭を力を込めて叩いた。
光汰を叱る瑛二を見ながら春人の横に並ぶ。
「里沙ちゃんに用事でもあった?」
「いや。ただ付き合いだしたんだし、誘ったんかなーって思っただけ。」
その返しに、1度春人を見る。
それは…春人にも同じことが言えるのだろうか?
「春人は…誰か呼んでんのか?舞山さんとか…。」
聞かなければ良いのにやはり気になってしまってそう尋ねると春人は少し不思議そうな顔をしたものの、きちんとそれに答えてくれる。
「いや?マイ…舞山さん忙しいのか何なのか優奈ちゃんとの一件から全然会ってくんなくて…俺も早く会いたいんだけどさ。」
最後の言葉に、胸を深く抉られるような痛みと共に息苦しさが訪れる。
吐いてしまいそうな不快感と共に少し下にある春人の顔を見ると、同時に見上げてきた春人と目が合った。
「…なに?」
「ずっと気になってたんだけど…春人と舞山さんは何がきっかけでそんな仲良くなったんだ?」
そう聞くと春人は焦ったように目をキョロキョロと動かして、覚えていないと答えてきた。
その態度に、冷めたものが心の中に溢れてくる。
春人は、俺に教えてくれないことばかりだ。
そんなに俺は信用ならないのか。
このまま無理にでも問い詰めてしまいたいが、そんなことをしては俺と春人の間にある距離はもう二度と埋められなくなってしまう。
俺と目を合わせようとしない春人にまた少し苛立ってしまったが、落ち着けるように息を吐く。
春人が目を逸らしてくれてて良かった…。きっと目が合ってたら、本当に我慢できなくなってしまっていたかもしれないから。
自分が思っているよりもずっと春人に意識が向いていて、感情を左右されていることには薄々気付いていたが、改めてその振れ幅を認識すると情けない自分に溜め息が出る。
「色付けやるか。」
秘密を明かしてくれない理由をあれこれとマイナスに考えるのはやめようと、必死に自身に言い聞かせながらいつものように笑顔を作り春人に声をかけ、木材を手に取り新聞紙の上に並べる。
吹きかけられるスプレーにより黒く塗りつぶされていく木材に、なんだか自分の姿を見ているようだと感じた。
ともだちにシェアしよう!