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◀◀9/28(土) 2 from宗平

話し声が聞こえてきたのは春人との待ち合わせ場所の部室棟横から。 「――笠井に見せてやろうか。」 だが聞こえてきたのは裕大の声。 なんで裕大がここに…?見せる?何を? 「っ…お前のモンなんかじゃねーよ。」 次いで春人の声が聞こえてきて2人が一緒にいたのだと分かった。 もうこの角から1歩踏み出して顔を出せばすぐそこに2人はいると言うのになかなか足を動かすことができない。 しかし焦った春人の声が聞こえてきて、何事かと俺も慌てて顔を覗かせる。 するとそこには何故か春人の首に後ろから腕を回している裕大と、それを甘んじて受け入れているような姿勢の春人。 そして2人の顔が……異様に近い。 思ってもなかったその姿に思わず目を見開くが、それでも平静を装って裕大と何をしていたのか尋ねてみた。春人は「いや、別に。大したことねぇから…。」と言って裕大の腕の中から出てくると両手に持った飲み物の片方を俺に差し出してくる。 軽く礼を言ってから受け取ったそれはチームメイトのクラスが出店してるスムージー屋のもので、チームメイト曰く「甘すぎて飲み物飲んでるのに更に別の飲み物欲しくなるレベル」。 苦笑いを浮かべながらカップに書かれた名称を見ていると不意に春人が俺に背を向けて裕大の元に戻っていく。 それだけで少し焦ってしまって思わずその手を掴みそうになってしまったが、例え春人を引き止めたとしてその後俺はどうするのかと考えて自制する。 春人は裕大の目の前まで戻ると無言でもう片方の手に持ったスムージーを差し出した。 …俺の為だけじゃなかったのか。 先程見たばかりの2人の顔の近さを思い出して眉を寄せる。 まるで…キスでもしてしまいそうなほどの近さだったそれに「まさか」と思って軽く頭を振る。 いやでも"相手"が舞山さんというのもあくまで俺の予想だし……裕大という可能性だってあるのだ…。 今まで考えてもなかったその予想に喉が酷く乾いていくような感覚がしてスムージーから伸びるストローに口を付ける。激甘だと聞いていたはずのその味が、なんだかよく分からない。 裕大が笑顔でスムージーを受け取って礼を言い、それに応えてから春人がこちらに振り返る。その顔には笑み。 裕大は春人にとって、飲み物1つでも受け取ってもらえたら嬉しくなっちまうような存在なんだ。 そんなことを考えてまた暗い気持ちになった俺の元に駆け戻ってきた春人は、俺の腕を引き校舎へ戻ろうと誘う。 春人は目の前に居て、俺に触れているはずなのに、それでも春人との距離がとてつもなく遠く感じて、俺は心も無いままに笑ってみせた。

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