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◀◀9/29(日) 3 from宗平

教室に着くと宣言通り春人が椅子に腰掛けて校庭を眺めている姿がそこにはあった。 物音に気付いて振り向いた春人の顔を、今度はきちんと見つめる。 「…忘れ物?」 そう聞いてきた春人に首を横に振るとまずは謝ろうと今までの態度を詫びる。 春人はそれに軽く答えてくれたが、その後の言葉が互いに続かずに沈黙が流れた。 春人に"相手"を聞いてやるんだと怒りに任せてここまで来たが、いざ目の前にすると勇気が出ない。すると春人が突然顔を上げ昨日の1on1についての励ましの言葉をくれた。 「昨日のゲームさ!…凄かった。宗平の"勝ってやる"っていう気合いがこっちまで伝わってくる感じで。シュートもガンガン決まってたし…。」 そう言うと1度間を置いて最後に「かっこよかった。」と言う春人。 呼吸が、途端に苦しくなる。 あまりの苦しさに春人を見つめ近付くと焦ったような顔をされた。 その表情に息を小さく吐く。 大丈夫。落ち着け…。 「俺は、春人のこと何も知らねぇよな…。」 自嘲のように言いながら初めて会った日に痕を付けていた首元に触れ、落ち着けるために外していた視線を春人に戻す。 「春人から、話してくれたらって思って…我慢してたけど、案外俺って耐え性無いみてぇ。…ほんと、自分でも意外。」 小さく笑い、こんなことを目を見ながら言うのが情けなくて言いながら再び視線を外してしまう。 だが、何のために戻ってきたのだと考えて意を決し口を開いた。 「春人。俺に春人の秘密、教えてくんねぇ?」 「ひみ…つ…?」 俺に尋ねられた春人は突然の質問に何のことだか分からない様子だ。 「…春人の……"相手"…。」 そんな春人に説明するように告げた俺は、やっぱり土壇場になって少し言うのに気が引けてしまったが、それでも「前置きまで置いたのに結局言わない」なんて選択肢はなかった。 そしてそれを聞いた春人は驚いた表情のまま「だ…め…。」と一言、拒絶の言葉を呟いた。 胸の奥深いところに鋭利な何かが刺さるような、鋭い痛みが走る。 「春人…。」 「だめ。だめだ。言えない。」 「春人っ」 「言えない!本当に…!」 「っ…"お願い"…聞いてよ。」 全力で拒絶してくる春人に、こんな使い方はダメだと分かっているのに思わずボウリングの日に交わした言葉を引き摺り出してしまう。 俺との約束を覚えてくれていたらしい春人もすぐに意味が分かったようであったが、頑ななその態度が変わることはなかった。 「…無理だ…。」 「春人!」 「言えない!宗平には、絶対に!!」 そう言い捨てて教室を飛び出した春人に、俺は追いかけることもできずに呆然とする。 『そんなんも分かんねぇから春人も『笠井には』言えねんだよ。』 そう。 春人が最後に残していった言葉は、奇しくも先程裕大が俺に言った言葉と一緒だったから…。 ガンッと机を殴り、未だ痛みを訴える胸に手を当て、心臓を抉り出すかの如く深く…深く爪を立てた。

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