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10/21(月)

「春人…これなに?」 「っ……!?」 宗平が席にいた俺を見下ろしたかと思ったら突然人気のない化学室に連れてきて俺を壁際に追いやった。シャツのボタンは1番上まで閉じていたのだが、そもそもそれを不審に思ったらしく、連れてきた後にボタンを外し痕を確認した宗平は顔を顰め、先の言葉を俺に投げてきた。 「裕大とヤッたの?」 オブラートなんて言葉知らないかのように全く包み隠さずに聞いてきた宗平にブンブンと頭を横に振って答える。 「じゃあ何これ?」 「こ…れは…昨日突然噛まれて…でも噛まれただけで他には別に…」 あぁ、俺なんでこんなこと聞かれてしかも正直に答えてんだろ…。でも目の前にいる宗平が怒気を孕んだ声で聞いてくるから圧倒されてしまう。 「春人…普通そんなホイホイ首なんて噛まれる?」 「なっ…俺だって真剣に抵抗してるよ!でもいつも突然だし…力じゃなかなか敵わなくて…。」 言いながら情けない自分の発言に声量が尻すぼみになっていく。 そんな俺を見て宗平は「ごめん。襲われてる子に言うセリフじゃなかったよな。」と息を吐いて俺を抱き寄せると俺の頭を肩口に当てさせ、それに自身の頭を寄せた。 「俺も焦ってんのかも。裕大の前では強気で出てるけど。」 「……。」 前々から感じてはいたが、どうやら長岡はもう完全に宗平の前で演技をすることをやめたようで、宗平もそれにショックを受けるでもなく、2人は俺を挟んで対立している。そんな宗平を慰めるように俺は宗平の背中に腕を回してポンポンと軽く叩きながらさする。 「いや…俺が襲われやすいのは…なんつーか…事実だし…。」 ボソボソと口にすると宗平は「春人って力も弱ぇもんな。」と笑い、体を少し起こし…なぜか俺の腕を壁に押し付けた。 「宗平…?」 「外してみてよ。」 いたずらっぽい口元がニヤリと笑う。 「ちょっ…ちょっ!ちょっ!近いって!!」 精一杯距離を取ろうとするが背中が既に壁に当たっているのでそれ以上離れられず、宗平との距離はだんだんと狭くなっていく一方だ。 懸命に腕を外そうと肩ごと揺するのだが全くもって意味が無い。 「春人。もっと抵抗しねぇと…キスできちゃう。」 本当に唇が触れ合いそうな距離で宗平が言う。 ドクドクと脈打つ心臓の音は、宗平にも聞こえているのだろうか? ───あ… と思ったところで始業の鐘が聞こえてきた。 その鐘と同時に宗平は顔を上げ「またいじめすぎたな。」と言って俺から離れていく。 だが俺は腰が抜けてしまってそのままヘタリと床に座り込む。 宗平はそれを見てまた笑ってどうせ遅刻だから落ち着くまでこのままここに居ようと提案をしてきた。 だが同時に「続きは付き合ったらさせて。」と耳元で言われて俺は落ち着くどころか余計に心臓をうるさくさせていた。

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