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10/30(水) ※

グリィッと感じるところを押しつぶすように嬲られて意図せず甘い声が漏れた。 もう上体を起こす体力も無くてシーツを力無く握る俺に、覆いかぶさった長岡は音を立て背中に口付けていく。 「お前ってさ、こんなあっさり抱き潰せんのに…」 その続きは言わないままゆるりと体を動かした長岡に奥を突かれる。 「んぁっ…」 鼻に掛かったような声。自分の喉から出てきたというのが信じられない。信じたくない。 普通の1日のまま終わりを迎えられると思っていた今日は、風呂上がりに長岡に会ってしまったところで終わりを告げて、時刻は12時をまわったところ。もう1時間以上経っているのに、まだまだ終わらせる雰囲気の無い長岡。 もうほんと勘弁してくれ。明日も学校なんだ。…宗平にも会うのに…。 俺の体に残された無数の痕を見たら、宗平はまた怒るのだろうか…。 「笠井のことでも考えてたか?」 ほんとになんでこいつはこんなに勘が良いんだ。もう今更こいつの勘の良さにいちいち肩を震わせて驚いたりなんかしないから、無視を決め込み額を枕に押し付ける。 「笠井と付き合う気になった?」 「っ…まえに、かんけっ…ね…」 突き上げに声を途切れさせながら答えると長岡は面白そうに笑う。 あれからも宗平は毎日俺の心配を他所に俺に構ってきては「かわいい」と言って頬を撫でる。俺だって男だからかわいいと言われて嬉しい訳では全くないが、頬が熱くなるのは止められない。 長岡も先週の土曜こそ感情を剥き出しにしたように、文字通り俺に噛み付いて来たが、そこからまた今に至るまでは普段と変わらぬ飄々とした嫌味な態度に戻っていた。 俺を抱くのも相変わらず。 「声、掠れてきてんな。」 喉に指を回したかと思ったらクィッと力を込められて気道を塞がれる。 「ッ…ぁっ…」 「春人は…俺に抱かれて枯れた声で笠井を呼ぶんだな。」 喉に手をかけたまま俺の体を起こした長岡は膝の上に俺を抱えて下から揺すり上げる。 俺はそれに生理的な涙を流して、涎の溢れる口もそのままに喉にかかる手を外そうともがいた。 そして長岡は漸く喉から手を離したと思ったら、今度は顎に手を添えて首を回させ涙の伝う頬に唇を寄せる。 そして涎でベトベトになった俺の口に指を当て「汚ね。」と笑いながら…深く深く口付けた。

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