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11/1(金)
体操着を持ちながらバラバラと移動していくクラスメイトたちを見て青ざめる。
休み時間の度、宗平が俺の席に来る前にすかさずマフラーを巻き直していたことで首の痕どころかボタンさえも確認されずに済んでいたのだが……体育での着替えの存在をすっかり忘れていた…。
今までは束縛系彼女の痕を見られたくないからとトイレで着替えることが出来ていたが、今となってはその嘘で騙せるのは光汰と瑛二のみ。それどころか今度そんな嘘を吐こうものなら長岡に抱かれたのだと宗平に暗に言うこととなるだけだ…。
急いで携帯を開きガチガチと文字を打ち宗平に突きつける。
「『具合悪いから体育休む』…まじか。確かに少し顔青いけど…風邪悪化してんの?」
宗平の勘がアホみたいに悪くて本当に良かった!マスクの下で口をニヤけさせながら首を縦に振る。続けて『保健室で休んでる』と打ち込んだ画面を見せて、これで良いだろう、と思いながら歩き出そうとしたのだがそこで宗平が声をかけてきた。
「俺もついてくわ。」
えっ!?と思ったが喉風邪の設定上まだ喋れないしブンブンと頭を振って突っぱねるように手を出したのだがその手を取られて「好きな子とちょっとでも一緒に居たい気持ち分かって?」と耳元で囁かれた。それに俺はマスクのせいで篭もった熱なのか何なのか…普段以上に顔を熱くさせて宗平を見るが、宗平はどこ吹く風というようにニコリと笑って俺の背中に手を回し保健室へと誘導していった。
保健室には保健医の先生がいて詳細を聞かれそうになったのだがひたすらベッドを指差し、とにかく休ませてくれとジェスチャーで訴えた。後ろから宗平が風邪のため喋れないのだと伝えてくれて、首に巻いたマフラーのお陰もあるのか納得したらしい保健医は快くベッドを貸してくれた。
「それ寝る時は取んねーとだめだろ。」
横になろうとした俺のマフラーの端を掴んで宗平が言う。
いや、待て。マフラーで隠しているからわざわざ閉める必要は無いだろうと思ってこの下のシャツのボタンは普通に開けてあるんだ。暑いし。取られたら非常にまずい。
抵抗するようにマフラーを抑えた俺に宗平は「取りたくねーならせめてもっと緩く巻けよ。巻き直してやるから。」と言った後、ベッドに乗り上げて腰掛ける俺から無理矢理にマフラーを剥ぎ取ろうとする。だが俺も懸命に剥がされていくマフラーを掴んで自身の首に押さえ付ける。
「春人ー!」
じゃれあいを楽しむような口調の宗平とは違って必死な俺だったが、昨日と同じように冷えた宗平の指先がマフラーの隙間から入り込んで首に触れたことで、驚きと共にマフラーを離してしまった。
そうして暴かれていく首元を見た宗平の顔から笑顔が消えていくのを…気まずい気持ちで俺は見ていた。
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