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11/1(金) 2

きつく腕を掴まれたかと思ったら視界が回り、目の前には宗平と…その向こうにはカーテンの壁に囲まれた天井。 カーテンの向こうでは本鈴が鳴って、それと同時に女生徒達が保健医に話しかけながら入ってくる声が聞こえた。 そんな音を聞きながら呆然としていると、宗平が俺の首からマフラーを完全に取り除き、シャツの襟元を大きく開かせる。そして首から胸へと落ちた痕を見たのだろう。更に力を込めて俺の腕を握ると俺の首元に顔を寄せてきた。 「…っ宗平!」 焦りから保健医や女生徒たちがいることなども忘れて普通の声量で名前を呼んでしまったが、彼女たちは自身の話に夢中なのか、それとも保健医には先程までの宗平の声が聞こえていたからまだふざけ合っているのだと思って疑問を持たなかったのか…特にこちらを確認してくることもなく会話を続けていた。 一方、俺の声が確かに聞こえたらしい宗平は俺の首に触れる前に体を少し離すと冷たい目で俺を見下ろす。 「声枯れてたのって…そういうこと。」 そう目の前にいる宗平に小声で言われた言葉にダラダラと冷や汗が溢れ出てくる。何も返せずに視線を逸らすだけの俺に宗平は再び顔を寄せる。だが今度は俺の口に。 キスをされるのだろうかと、ドクドクとうるさい心臓を押さえ付けるように目をギュッと瞑る。 「っ……、…………?」 …だが思っていた感触は来なくて薄目を開けていくと宗平も固く目を瞑っているのが見えた。そして宗平は握っていた腕を離して俺の顔の両脇に肘をつき額を擦り合わせる。 「ここで無理矢理何かしたら裕大と同じになっちまうから、しねぇけど…ほんとはすげぇキスしたい。」 どんな表情をしているのかは近すぎる距離のせいではっきりとは見えなかったが、苦しげに出されたその言葉から察することができた。 「……ごめん…。」 別に謝る必要など無いし、俺が誰とどんなことをしていようが付き合ってもいない宗平には関係は無いのだけど…今はそんな考え方をしてはいけないような気がした。 「…別に…謝ることでもねぇだろ。抱かれてんのは春人の意思じゃねぇんだから…。」 怒りにまかせて力を振るう先が目の前にいる俺ではないのだと…自らに言い聞かせようとしているのか、俺の顔の横にある宗平の手が、シーツをクシャリと握る。 「付き合った後に死ぬほど抱きゃ良いんだし。」 「は?」 小さかった声を一際潜めてそう言った宗平に俺は目が点になった。 「やっぱ同じ家に住んでるってのが1番の問題だよな。」 え?いやいやいや。え?さっき何て言ったのあなた?なんか恐ろしい言葉が聞こえたけど何普通に次の話題に移行してんの? 「春人、明日俺ん家泊まり来ねぇ?」 「え?」 突然出された提案。 そんな急に言われても宗平の家族も困るだろう。別に俺としては問題は無いが…。いや、有るか。ひとつ屋根の下で過ごすのが長岡から宗平になるだけだ。…ずっと気持ちが楽だけど…。 「明日迎えに行くな。」 最後にニコリときれいに笑ってそう言うと、宗平は体を起こして足取り軽やかに授業に向かって行った…。 残された俺はベッドの上で「え?俺、明日泊まりに行くの?宗平の家に?」と考えながら呆然とする。 完全に宗平のペースにされている…。

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