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11/1(金) 3 from宗平
ガンッッと荒々しくロッカーの扉を閉めると隣で着替えていたチームメイトが驚いたようにこちらを見た。
「…宗平…なんかあった…?」
「いや?悪い。なんか勢いついちまった。今の音は俺もビビったわ。」
嘘。本当はすぐそこにいる裕大に今すぐ殴り掛かりたくて仕方ないから力を込めた。
怒りを笑顔の裏に隠して答えるとチームメイトはホッと息を吐いて着替えを再開する。
こうやって気分を上下させるの自体、裕大には滑稽に映っているのかもしれないが、この怒りを正しく消化する方法なんて俺は知らない。
部活中もボールを思いっきり投げつけてやりたくて仕方なかった。きっとそんなことしても涼しい顔で受け取られるだけで終わってしまうのだろうが。
「…。」
俺の告白の後も変わらず春人を抱いているらしい裕大。
裕大も春人のことが好きなのか?春人が振り向いてくれないから無理矢理…?
考えているうちについ先程まであんなに憎たらしく感じていた裕大の姿が自分の行く末ではないかと思えてきて同情的な思いが芽生える。
…1度裕大とも話してみるべきか…。
今のところ俺が認識している情報としては裕大が春人を抱いていることと、そこに春人の意思はないということのみ。
裕大の目的も気持ちも知らなければ何がきっかけでそんなことになったのかも知らない。
「裕大。この後時間あるか?」
突然に話しかけてきた俺に裕大は訝しげな顔をするが、パッと笑顔を作り快諾する。
俺もつい最近までこの笑顔に騙されていたわけか…。
チームメイトに手を振って2人で人影のない校舎の脇へ移動する。
「で、何の用だよ。俺早く帰りてぇんだけど。春人構ってやらなきゃならねぇし?」
着いた途端仮面を剥がしたように横柄になり嫌味な笑顔でそう言った裕大。最後の言葉はその気もないのに俺を挑発するために言ったのだろうと推測し、聞こえなかったフリをして拳を握りしめ堪える。
「裕大は…春人が好きなのか?」
「そんなこと笠井に関係ねぇだろ?」
懸命に怒りを抑え、話を聞こうと努める俺に対し裕大はバカにしたような態度で続ける。
「俺の事情でも理解しようってか?それで俺の事理解できたらお前は春人から離れてくのかよ?」
「…離れるわけねぇだろ。」
睨み付けながら答えた俺を裕大は、知ってましたと言わんばかりに鼻で笑う。
「俺の事よりお前は早く付き合えるようにもっと頑張ればー?春人粘り強いからな。体の割に。」
また最後に言われた言葉が俺を煽る。
「"秘密"の正体を知れて良い気になってんのかもしんねぇけど、お前は結局何も知らねぇままなんだよ。俺の事も。春人の事も。」
そう顎を上げ見下げるように言ってきた裕大に、だからここに呼び出したのだという事も忘れて俺は「あぁそうかよ。」と言い捨ててその場を去る。
突きつけられた事実から、目を逸らしたくて堪らなかった。
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