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11/2(土)

朝、玄関に呼ばれた時には既に宗平が立っていて長岡の母親には「泊まり行くならもっと早く教えてね?」と怒られてしまった…。 迎えが来ているという状況で「泊まりになんて行きません。」なんて言ったら逆に怪しすぎるので、俺は何も言い訳できないままただ謝って荷物をカバンに詰め込み部屋を出た。 「いらっしゃーい!宗平が同級生連れてくるなんて高校入って初めてね!」 そう言って温かく迎えてくれた宗平の母親。 宗平は姉と弟がそれぞれ1人ずつで、大学生の姉は家を出ているため現在両親と弟の4人で生活をしているらしい。 「春人、とりあえず部屋行こうぜ。じゃあ母さん、俺ら部屋で暫くゲームしてるから昼んなったら呼んでー。」 「あんたそれいつもの生活と変わんないじゃないのっ!」 怒り出した宗平の母親に焦って「俺お母さんの手伝い何かするよ!」と宗平に言うと宗平は面倒そうな顔をする。 「いーよ。春人客人なんだから。」 「あんたが言うんじゃない。ごめんねぇ春人くん。それじゃあお昼できたら呼ぶからその時は運ぶの手伝ったりしてくれるかしら?」 優しく微笑んだ宗平の母親に少し照れながらコクリと頷き、宗平に案内され部屋に向かう。 「兄ちゃんの友達ですか?はじめまして。幸広(ゆきひろ)です。よろしくお願いします!」 2階に上がったところで少し階下を気にしながら待っていたらしい宗平の弟が礼儀正しく挨拶をしてきた。歳を尋ねると現在小学5年生とのこと。まだまだあどけなさが残るが…この子もやはり美形で、先程軽く挨拶した宗平の両親の顔を思い出して、なるほどなぁ、となった。 「兄ちゃんゲームするの?何やるの?俺もやりたい!」 キラキラと目を輝かせながら強請ってきた幸広くんに宗平は「えええー。」と渋っている。だがどうせなら人数は多い方が良いだろう。俺はゲームも下手くそなので対戦系なら張り合いが無くてつまらないだろうし。 「良いじゃん宗平。一緒にやろうよ。」 「えええええ」 「兄ちゃんやろうよー!」 俺と幸広くん、2人に説得され宗平は渋々と首を縦に振った。 何をそんなに嫌がるのか…と思っていたがゲームを始めてしまえば俺たちは3人揃って画面を見ながら大騒ぎ。時にはゲーム内のキャラクターに全く関係がないのに体をくねらせたり飛び跳ねたりする幸広くんに笑って、同じようなことをしていたらしい俺を宗平が指摘し、また笑った。 宗平の母親に呼ばれて取った昼食も美味しかったし、温かい雰囲気の宗平一家と取る食事は、食卓を囲んでいるだけで楽しかった。 昼食を食べた後はまた3人で別のゲーム。 今度は宗平がクリアしたことのあるアドベンチャーゲームを幸広くんがプレイする。 「あ、宝箱通り過ぎた。」 「え?どこ?え?どこどこ!?」 1度プレイしたことのある宗平からアドバイスを受けながら幸広くんが必死にプレイする様が面白くて、俺はただ笑いながらそれを見ていた。 そしていつの間にか時間も過ぎて、夕飯を取り風呂に浸かり、俺は大満足で客間に宗平の分と並べて用意された布団の上に転がった。 「宗平の家族って良いねー。温かい感じする。」 「そうかー?普通じゃね?」 え?そうなの?普通なの? 俺はひとりっ子だし兄弟と遊ぶというのがどんな感じなのかもよく分からなかったからなぁ…。俺も弟がいたらあんな感じかなぁ…。 そんなことを考えていると同じく寝巻姿になった宗平がドサリと俺の顔の横に手を付いて俺に覆い被さってきた。 「…やっと2人んなれた。」 ……え。

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