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11/2(土) 2
「保留の答えはいつ頃出そう?」
すぐ正面にいる宗平が静かに尋ねてくる。
長岡との行為を見ても宗平が変わらず傍にいてくれたことにより、見られた恥ずかしさと共に嬉しさと困惑が襲い、そして告白という衝撃が更にそれらを搔き回して、俺の心はぐちゃぐちゃだった。だがその反動からか、たまに全てを無かったことにしたくて堪らなくなり、俺は脳内から全てを消し去ったようにスッキリと行動できる時もあったりする。…先程までみたいに。しかし宗平の告白に対する答えは未だに出ていなかった…。
そもそも大前提として横たわるのが俺も宗平も男だという事実。それに宗平が俺なんかをなぜ好きなのか…考えれば考えるほど分からない。
だって宗平は女の子が好きだったはずだし…。
「まだ…全然…。だって、やっぱなんか…。俺…男なのに…。」
ポツポツと話しだした俺の前髪を宗平が少し指で掻き分け額を優しげに撫でる。
「宗平は…きっと勘違いしてんだよ…。友達の好きと…恋愛の好きを。」
「普通友達に勃てねぇだろ?」
「た…!?」
驚く俺に宗平が少し体を動かして固いものを太腿に軽く押し付けてきた。見なくたって…何が当たったのかは分かる。
俺はそれにアワアワとしながら宗平の肩に手を当てて突っ撥ねようとするが、その手を宗平が掴み、なぜか自身の胸へと移動させ力を込めて触れさせる。
「分かる?春人が目の前に居るってだけで、…ずっとこの調子。」
ドクドクと…早めに脈打つ心臓。それに思わずパッと手を引っ込めて目を逸らした。
「春人…。」
熱い吐息を吐いた宗平。宗平に負けないくらい、早く大きく俺の心臓が鼓動していく。
「っ…宗平…彼女だっていたこともあんのに…いきなり好きとか言われても…。」
「"好きだ"って思っちまったんだから仕方ねぇだろ。今更嘘吐いて自分に言い聞かせたって変わんねぇよ。」
なんでそんなに迷いが無いんだ。いや、宗平の性格を考えれば1度納得してしまったものに足掻こうとしないのはなんとなく頷ける気もするが…。
「…宗平は…俺のどこが好きなんだよ…。」
うわ。なんだこのウザさ溢れるセリフは…。だが本当に心の底から疑問なのも事実。答えが気になってチラリと宗平を見上げると、宗平はそれにただ一言「分かんねぇ。」と返してきた。その返しに驚いて口をポカンと開ける。
「気付いたら春人のことばっか考えてたし、春人のこと知りたいって思ってた。だからどこがって言われても分かんねぇけど…」
そこで不安気に見ていた俺の視線に気付いた宗平が俺の頭を撫でてから微笑む。
「これで今、春人の好きなとこ全部挙げたとして、例えそれを持つ別の人が現れても俺はその人のこと好きにはなんねぇよ。俺が好きなのは春人だから。」
その言葉にまた何も言えなくてただ顔に熱を集めていくだけの俺の額に宗平が口付ける。
「気長に待つつもりではいるけど早く答えてくれると嬉しいかな。」
そう言ってまた微笑むので俺はもう見ていられなくて顔ごと背けて「もう寝る…。」と一言呟いた。
「ん。おやすみ。春人。」
そうは言ったものの宗平は布団に入ることなく部屋を出て行った。暫くして戻っては来たけど、宗平が部屋に居なかった間も戻ってきてからも、俺は眠ることなんて出来なくて、顔を隠すように布団を頭から被っていた。
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