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11/3(日)
宗平の家から戻ってきて夕飯を取り、自分の部屋へと戻るとそこには長岡がいた。
思いきり顔を顰める俺を見て長岡は「お泊まりは楽しかったか?」と聞くと腰掛けていたベッドから立ち上がって俺の正面に来た。
「笠井との体の相性はどうだった?」
「泊まるってだけでなんでもかんでもそっちと結び付けんな。」
「へぇ。ヤッてねーんだ。告白までしてんのに笠井も報われねーな。」
その言葉に少し罪悪感が芽生えるが、それよりも今は目の前にいる長岡だ。
長岡は楽しそうに笑うと俺の頬に触れようとするが、先に俺の手がその手を払い落とす。
「告白されて満更でもない?」
長岡は払われた手など気にも留めることなく更に尋ねてくる。
「…お前に関係ねぇだろ。」
「あるに決まってんだろ。ったく。笠井のせいでせっかく時間かけてきた事も全部無意味じゃねーか。なぁ?」
そう同意を求めるような口調だが、他の答えは許さないとばかりに長岡が俺を壁際に追いやると腕で囲ってくる。
長岡の言う「時間をかけて」というのは俺の嘘を宗平に気付かせたことを言っているのだろう。
長岡はその頃から宗平を警戒して…そして俺を孤立させようとしていたのか…。
怒りにも似た気持ちで見つめると長岡は普段の嫌味な笑みを返す。
それに俺は1つ溜め息を吐いた。
「なぁ…。俺は…どうやったら長岡の過去に贖 えるんだ?」
「前に言ったろ。完全に俺のモノになったらだ。」
「…そんな曖昧なこと言われてもわかんねーよ…。」
本当に分からなくて…でもやっぱり単純に長岡のことを好きになるという意味ではないような気がしてそう返すと、長岡が距離を狭くして近付いてくる。俺はこれ以上近付きたくなくて腕でその肩を押し返すが、長岡にその手を取られ握り込まれた。
「朝も昼も夜も俺のこと考えて、俺だけを求めて、俺以外には何も要らねえ、って…お前が言う気になったらだな。」
「…言わねえよ…。気持ち悪ぃ…。」
顔を歪めてそう返すと長岡は「まぁ今のはオーバーだけどな。」と笑いながら言って俺を抱きしめた。
「早く笠井も居なくなっちまえば良いのに。」
もがく俺の頭上で長岡はそうポツリと呟いて、俺の腕を抑え込むと首元に吸い付いてきた。
「おまっ…!」
俺はまた休み明けの宗平の反応を思ってギョッとする。明日は祝日だから学校は無いけど…この痕は1日で消えたりしないだろうか。…しないな。
アホらしくそんなことを考えている俺を見ると、長岡は軽く笑い部屋を出て行った…。
なんなんだ…本当に…。
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