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11/5(火)
なんで…。
「お前いつもこんなちんたら歩いてんの?遅刻常習犯?」
今日は朝練が無いのだという長岡は、何故か今俺の隣を歩いていて俺と一緒に登校をしている…。学校まではたった10分の距離だというのに足取りが重すぎて、近かったはずのそれが今は遥か彼方に感じられる。
「いや…あの…俺のことは気にしないで置いてってくれねぇかなぁ…。」
そう言うと長岡はニヤリと笑って俺の肩に腕を回し顔を近付け「学校までおぶってってやろうか?」と聞いてくる。
「ふっざけんな。」
「あぁ。もしかしてお姫様抱っこがお望みだった?」
顔を押し返して拒否した俺に長岡は更に楽しそうにからかうようなセリフを言ってくる。
そんな長岡をイライラしながら突っぱねようとしていた俺の腕が突然長岡とは逆サイドからグンッと引かれて、全く見ていなかったその方向からの突然の力に焦って見上げると宗平が長岡を睨み付けていた。それを見た長岡は笑顔のまま黙っていたかと思ったら俺の首に回したままだった腕に力を込めて俺を引き寄せる。
「お前の家こっちじゃねぇだろー笠井。春人なら俺がちゃんと連れてくから安心しとけ。」
「一緒にいんのが裕大だから安心できねぇんだろうが。」
俺の頭のすぐ後ろ側で言い合いを始める2人。
やめてください。空気が凍りそうです。
「笠井。未だに春人からOK出ないってことはそういうことだろ?察しろよ。」
長岡はそう言って一昨日付けた痕を見せつけるかのように俺の服を掴んで首を晒させる。泊まりに行った日には付いていなかったその痕を見て宗平は苦々しげに長岡に向けた視線を鋭くさせた。宗平の反応も恐ろしいのだが…いや、それより一応まだ大通りには出ていないから人通りは少ないけどここも道のど真ん中なんだ。派手なことは控えてほしい。
とにかく離れたくて逃れようとした俺だったが、それより早く先程より強い力で腕を掴まれて、長岡の腕の中から宗平の胸元へと引き寄せられた。
「俺の春人に気安く触んないでくんねぇ?」
眉間に深く皺を刻みながら宗平が長岡に言う。
いや…俺は誰のものでもないんだが…。
「笠井って女が好きなんじゃなかったっけ?春人が男だって分かってるか?しかもこんなお古が良いとか笑える。」
「うるせぇ。処女厨は黙ってろ。」
嘲る長岡の言葉に被せるような速さで口汚く返した宗平の言葉に思わず笑いそうになるが、それより先に長岡が、ハッと鼻で笑った。
え?こういうのって言われた本人もツボるもんなの?
「春人の"初めて"になれなくて残念だったなぁ、笠井?」
眉を寄せながらニヤーッと口元を歪めた長岡にその言葉を言われた瞬間、俺の腕を掴む宗平の手の力が増した…。
もう俺は先程までの笑い出しそうな空気なんて忘れて、後ろにいる宗平の顔も見れず青くなったまま、この場から早く逃れたい一心で宗平の腕を掴んで学校への道を足早に進んだ。
だが大通りに出る少し手前で宗平に後ろから腕を引かれ、よろけた所を抱きとめられる。
「…告白の返事…早く頂戴。」
俺を後ろから抱き竦めて耳に唇を寄せた宗平が少し落ち込んだ声で言う。
「……ん…。」
俺はただ、それしか言えなかった。
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