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11/14(木)

今日は昼過ぎから雨が降っていたのだけど、それが帰る時には本降りになっていて、俺は窓に当たって流れていく雨粒を呆然と眺めていた。 「傘持ってねー…。」 独り言のように呟くと宗平が「ほら。」と言って折りたたみ傘を差し出して来た。 「え、いや。これ宗平使うだろ?」 「俺が帰る時には止んでると思う。この後降水確率30%だから。」 ええ…でも…と渋る俺に宗平が「良いから持ってけ。」と俺の手を掴んで掌にパシッと傘を乗せた。 「……ありがと…。」 申し訳なさもあり、見上げるように目線だけを上げて礼を言うと宗平は「おう。」と笑い部活に向かった。 「なんか宗平、最近すごく春人のこと大事にしてるよね。」 横で俺たちのやり取りを見ていた瑛二が突然にそんなことを言ってきて、俺はギクリと顔を引き攣らせる。 「瑛二もそう思うー?俺もずっと思ってたー!」 光汰まで言い出すから俺はすごく焦ったまま「えっ…いや、特別俺だけって訳でもないんじゃね…?」と返す。 「別に悪いことでもないんだから有難く大事にされとけばー?」 そう言ってきた光汰は少しうんざりしたような顔。 「でも宗ちゃんってアレだよね。自分のことにも勘の悪さ全開だよね。」 そう言って昇降口へと歩き出した光汰についていきながら首を傾げる。どういう意味だろう…。 「前に宗ちゃんから元カノたちとの始まりについて聞いたことあったんだけどさー、たぶん宗ちゃん、彼女たちのことそんな好きじゃなかったんじゃないかなって思うんだよねー。」 「光汰。それは宗平に失礼じゃないの?」 光汰の発言を瑛二がすかさず咎めるが、俺は話の内容が気になってしまって光汰に続きを促した。 「宗ちゃんって『よく知らない子とは付き合えない』っていうマイルールがあるだけで、ぶっちゃけ親しくなったら誰でも付き合えるんだと思うんだよね。」 「えっ…」 「でもこれは女の子から告白する時だけね。告白されて、特に不満が無ければ付き合うっていう…それくらいの感じだったんだよ。たぶんね。」 宗平に借りた傘をさしながら帰り道を光汰と瑛二と歩く。 少しショックを受けるが…あれ?ちょっと待てよ。今回は宗平の方から告白してきてるんだが…。 そんなことを考えていると何故か光汰と目が合った。 「だから俺としては宗ちゃんが本当に好きな子見つけて自覚した時がすごい楽しみなんだよねー。」 そう言いながら俺を見る光汰。 その視線が何を意味するのか…ハッキリとは分からなかったが俺はとりあえず「へぇ…。」と空返事を返して頭上に広がる宗平の傘を見上げた。 結局雨は夜になっても降り止まなくて、次の日、宗平は学校を休んだ。

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