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11/20(水)
「ちょっと待って。アンタなんで、自分もその人のこと好きって確信できたら付き合いますよ、みたいなスタンスでいるわけ?」
俺のベッドに腰掛け、勉強机の椅子に座る俺と向かい合う姿勢のマイマイに、宗平の名前は伏せて今までの流れを伝えるとそんなことを言われた。
理解が追いつかず半笑いで首を傾げる俺にマイマイは厳しい視線を向ける。
「アンタ、男とは付き合いたくないから裕大くんに抵抗してんじゃないの?」
そう言われてよくよく考えてみると、俺は最初から宗平の告白に焦る…というか鼓動を跳ねさせるばかりで、最初こそ友達でいたいという想いが強かったのだが最近は俺のことを好きだという宗平の態度を甘んじて受け入れてしまっている気がする…。
それってつまりマイマイの言う通り宗平のことを好きだって確信できたら付き合うってこと?え?まじで?ていうかこんなこと考えてる時点でもう好きなのでは…?
気付いた自分の気持ちに困惑するが、そんな俺を見るマイマイの目は冷ややかだ。
「あのねぇ、たぶんアンタは裕大くんと比べて彼が良く見えてるだけよ。」
えぇ、そうかなぁ…と思いながら宗平のことを思い浮かべると、初めて会った日に声をかけてくれた優しい所から始まり宗平自身の雰囲気だの眩しいくらいの笑顔だの一緒に居て楽しいだの…次から次へと好きなところが出てくる。
それに最近のむず痒いような雰囲気も考えてみればそこまで強い抵抗は無く、保健室での一件なんて自分からキスを待っていたような…。
いや、これ俺もう完全に宗平のこと好きかもしれない。
「春人。別にアンタたちを邪魔する気は無いけど、好き同士だから付き合いますってのは異性でしか通用しないのよ。アンタもその人も元々ノンケなら…こっちには来ない方が良いわ。」
真剣な…マイマイの声。
俺は境遇上、男同士で付き合うことに対しての抵抗感は一般より少ないのだと思うが、自分のセクシャリティが何なのかと聞かれるとよく分からない。
「高校生の恋愛だから…いろいろ経験積んどけとも言いたいけど、私はこれがアンタにとって"良い経験の1つ"になるっていう確信はないわ。」
普段より少し低い声ではっきりと語られるマイマイの言葉に、光汰の部屋で聞いた里沙ちゃんの話が頭に過ぎる。
『一緒に居る間は楽しかったし…安らいだけど…あの子を誰かに紹介する気にもなれなかったし、だんだんそんな自分に嫌悪したりして上手くいかなくなってったの。私には…あの子のために何かを捨てる覚悟は到底持てなかった…。』
あぁ、そうか…。
もしも俺たちが付き合ったら俺たちは互いの関係が上手くいってもいかなくても、色んなものを失ってしまうのか…。
上手くいったとしたらいつか周りの人間…最低でも両親には打ち明けなければいけないし、その時の反応が良いものであるとは思えない。それに結婚して子供を持つという未来は永久に失われる。
上手くいかなかったとしたら…残るのは里沙ちゃんのような後悔と痛み。思い出は…振り返るのが辛いものとなるだろう。
どちらを選んでも後悔する日が来る。いつか。
いつか──…
「………。」
何も言えずに黙る俺を、マイマイも黙って見つめていた。
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