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12/9(月)
宗平をフり、期末試験を終えた月曜日の朝、名前も知らない女の子から昇降口で声をかけられた。生まれて初めての体験。
しかしその子は「あの、これ、宗平くんに…。」と言って小さな手紙を差し出してきた。
どうやらこの子は最近は俺と宗平が全く会話していないのを知らないようだ…。
というかそもそも俺にじゃないのか。
なーんだ。
そう残念に思う気持ちと共に訪れたのは「この子が宗平と付き合ってしまったらどうしよう。」という不安。
俺ってすごく欲張りな人間だったんだなぁ…。
宗平をフッたのは自分だし、宗平の未来を奪えないと身を引いたはずなのに…それでも宗平がまだ自分のことを好きでいてくれないだろうかとか、宗平に彼女なんてできなければ良いのにと願ってしまう。
自己中心的で欲深い考え方だ。
だからこの手紙はすごく良い機会かもしれない。
俺の想いを断ち切る為に…。
そう思って手紙を受け取って俺からも口添えしておくことを伝えるとその子は笑顔でその場を立ち去った。
そもそも無事に渡せるか不安なため少し悪い気もしたが、宗平が俺のことをまだ好いてくれているなら反発心から付き合ったりとかもあるかもしれないし、あの子にとってもきっと悪い効果ばかりでは無いはずだ。
「宗平…ちょっと良い?」
昼休みに宗平に声をかけると宗平と一緒に昼食を取っていた光汰が目を丸くした。
俺たちのグループはあれから宗平と光汰、俺と瑛二といった感じに真っ二つに別れてしまって、本当は俺だけがグループから抜けるはずだったのに、月曜日に隠れるように教室を出て昼食を取ろうとした俺のことを追いかけてきた瑛二を見た瞬間、俺はまた泣いてしまった。
「…ここで話せねぇの?」
久しぶりに聞いた宗平の声はとても冷たい。
当たり前だ。自分から離れていったのにどの面下げて話しかけて来たんだと言いたいのだろう。
「うん…。ちょっと…2人で話したい。」
別にここで渡してしまっても良いのだが、きっとあっさりポイッと渡しただけでは読んでもらえなさそうだし、口添えするのだと約束もしている。ただ口添えから口論に発展した場合、クラスメイトには見られていたくない。
「…分かった。」
宗平は少し考えた後にガタリと席を立ち、大人しく俺の後についてきてくれる。
「俺も行こうか?」
瑛二が宗平の少し前を歩く俺の歩みを止めさせて腕を掴み小声で言ってきたが軽く笑って「大丈夫。」と返した。
瑛二は公園で交わした日の会話通り、俺に何も聞いてくることは無く、ただ本当に毎日黙って傍に居てくれる。何も会話の無い俺たちだが、今の俺にはそれこそが救いだった。
「また後で…。」
そう瑛二に言ってから宗平を伴い、以前も訪れた化学室へと向かった。
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