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11/30(土) 2

「…え?いや、ちょっと待って。春人も俺のこと好きなんだよな?じゃあなんで付き合えねぇの?」 困惑の中に…憤りの色を滲ませながら宗平が尋ねる。 「俺と付き合ったら宗平はきっといつか後悔する。」 「いや、何言ってんのか分かんねぇんだけどっ。」 責めるように、キツく掴まれた腕。 痛みに顔が歪みそうになるが耐える。だって俺は今、宗平にもっと痛い思いをさせているだろうから。 「長岡が俺を抱いてたのは…俺に復讐するためなんだ。」 「は…?」 「俺と長岡は小学校の同級生だったんだけど…俺のせいで…長岡はいじめられてた。俺は長岡の楽しくなるはずだった小学生時代を奪ったんだ。」 自分で、目を背けたくなるような自分の過去。 宗平には知られたくなかったが、もういっそ宗平が俺のことを嫌ってくれたら良いとも思う。 「俺は…宗平から何も奪いたくない。」 言い終えた俺の腕を、宗平はまだ離さない。 「奪うって何?何を?」 「いっぱいあるだろ…。宗平と周りの人の関係とか、この後できるかもしれない彼女とか…高校から付き合ってる人とそのまま結婚とかってのもたまにあるし…。」 「んな未来のことばっか言ってたって仕方ねぇだろ!」 遂に怒鳴りだした宗平だが、その声は怒りというよりも悲痛。 「その時の選択が正しかったかどうかなんて結局後になってみねぇと分かんねぇじゃん!そんな悪い方にばっか考えてたらどこにも行けねぇだろ!?」 宗平の言うことは分かる。 分かるけど… それ以上に、俺は今、俺たち2人の選ぶ未来が正しくないだろうことを感じている。 だって俺と付き合って宗平が得るものと失うもの…考えただけで失うものの方が多いのは明らかだから。 「宗平の…楽しくなるはずの高校時代まで奪えねぇよ…。」 「春人がいなきゃ意味無ぇだろ!」 あぁ。本当に宗平は俺を好いてくれている。でもそれは俺にとってもう喜ぶべきものではない。 「春人は…今、他の誰か…女の子のこと好きになれんの?」 「は…?」 それは…長岡に抱かれている俺が再び女の子を好きになれるかという意味だろうか? 「なんで、そんなこと聞くんだよ…!そういう追い込み方は…好きじゃないっ。」 今度は俺が怒りを抑えるように睨むと宗平は苦しそうだったその顔を一層歪める。 「追い込んでるとかじゃなくて…、俺は!……無理だ。今は春人以外好きになんてなれない!春人だってそうだろ!?今、俺以上に好きな奴なんていねえんじゃねぇの!?なら、良いじゃんか!今は!今だけでも!1番に好きな奴と付き合えば…!」 そう言ってきつく抱きしめてきた宗平。 この腕を…離したくない。 けど、きっとその選択をして行き着く先は里沙ちゃんと彼女のような、互いに涙を流し続けるだけの薄暗いものだ。 「ごめん…宗平…。」 ゆっくりと宗平の胸板を押して体を離す。 宗平は何も言わずに呆然としたままで、俺はそれを見ているのが辛くて目を逸らして先に立ち上がった。 「もうきっと…友達でもいない方が良いな。」 そう1度言うとピクリと宗平の指が震えた。 「春人…。」 もう名前を呼ばないでくれと願う俺に対し零すように呟いた宗平。 俺は今度こそその姿さえも見れなくて足早に公園を後にする。 「……。」 1人で歩く帰り道。 日が沈んだからなのか、身を切るような冬の寒さが、増したような気がした。

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