103 / 216

12/14(土) ※

チュッ…と、背中に吸い付いていた唇が音を立てて離れていく。だがまだ不充分だと感じたのか、ベッドに横たわる俺を後ろから抱き抱えたまま長岡は執拗に痕を残そうと唇を寄せる。 「ちょっ…あんま付けすぎんなよ…。病気みたいに見えんだろ。」 宗平をフッたのだと分かった日から長岡はいつも機嫌が良い。 それが俺と宗平が関わらなくなったからなのか、俺の抵抗が弱くなっているからなのかは分からないけれど。 「こんなとこ体育の着替えでも見えねぇし別に良いだろ。まぁお前が俺以外の奴とヤることになったら相手ビビるだろうけどな。」 その言葉に…もしこれを宗平が見つけたら、なんて、起こりもしない未来を想像してまた泣きそうになる。 だがそんな俺の顔を無理矢理振り返らせると長岡がキスをしてきた。 「笠井のことなんて忘れろって言ったろ。」 「…別に…考えてないし…。」 そう素っ気なく返すと長岡は「どーだか。」と言いながら俺の後孔に手を伸ばしてくる。 「おいっ!もぅ…、っ…」 慌てて制すが、まだ白濁が乾かずに滑るそこに容易に侵入してきた長岡の指は容赦なく俺の感じる所を甘く刺激した。 「…っぅ…」 長岡の指の動きに合わせるように反る背中。 宗平と話さなくなって、心は常に針の(むしろ)に居るようにチクチクと痛むのに、それでもこうして体を開かれてしまえば俺の体は快楽に従い感情を置き去りにしていく。 それに最近は…、感情までもが長岡に流れつつあるような気さえする。 それが寂しさを埋めるためなのか…それとも本心から長岡の過去についての償いをしたいからなのか…、今はまだ分からない。 でも、こうして長岡と体を重ねていれば、いつか本当に宗平を忘れる日が来るのかもしれない…。 そう思うとまたズキリと胸に痛みが走った。 揺れる視界の中で、宗平の笑顔が浮かぶ度に頭を振る。 こんな風に抱かれている時に宗平のことを思うのは、とても宗平に悪い気がしたから…。 「おい、集中しろ。」 「っひ…ん"」 突然に奥まで侵入してきたそれに情けない声が上がる。 「裕大って…呼んでみ?」 「んっ…呼ば…ねぇ…っ」 苦しさで眉間に皺を寄せたまま目を瞑り首を振った俺の頬を、優しく撫でる指。 「トぶ前に呼べよ。今日は俺の名前を。」 そう言って親指の腹で俺の唇をなぞる長岡。 薄目を開けた先で目が合った長岡は、少し不機嫌そうな顔をしていた。

ともだちにシェアしよう!