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12/28(金)

「えぇ?春人くん年末年始もお家に帰らないの?」 「すみません…2人とも仕事らしくて…。そもそも帰る家が無いと言いますか…。」 「うちも大晦日から旦那の実家に泊まり行っちゃうのよ…。困ったわね…。」 額に手を当てる長岡の母親に、やっぱりそうだよなぁ…と焦ると同時に宗平のことばかり考えていて報告を怠っていたことを後悔する。 「あの…食事は自分でなんとかするし光熱費も払うので…ここで過ごさせて頂いても…」 「うーん…。そうは言ってもねぇ…。」 食い下がる俺と悩む長岡の母親に、横から声がかかる。 「大晦日、俺ここに残ろうか?」 声のした方を向くと長岡がいつの間にか俺のすぐ横に立っていた。 え、待って。ここってここ? いや、ここはそもそも長岡の家だけど…。 「何言ってんの。あんただって一緒に帰らなきゃ。」 「友達と旅行行ったことにでもしといてよ。俺もメシ適当に自分で食っとくから。」 それなら自分が残ると言い出した母親を、父親の実家に嫁が顔を出さないのはまずいだろうと長岡が指摘して、結局、長岡の両親が不在となる大晦日と元旦の夜は長岡と2人で過ごすことになってしまった。 俺も長岡のおかげでこの家に留まれることが決まったのだが… 「あ…りがと…!」 来たる新年の幕開けが不安で仕方なく口を歪めながら苦々しげに、それでもなんとか礼を言った俺に長岡は母親の目を盗んで俺の耳に唇を寄せると「んな心篭もってない礼をくれるより体で払ってくれれば良いから。」と、おっさんみたいなことを言ってきた。 俺は反射のように勢いよく体を逸らして長岡を見上げる。するとニヤリといつものニヒルな笑みを浮かべる長岡と目が合った。 「良い1年の締めくくりにしような?」 含みを持たせてそう言った長岡に、なんだか悔しい気分になって何も言わずに部屋へと戻り、大掃除のために窓を開ける。 「あと4日で新年か…。」 冷えきった空気に晒されながら、薄らと白い息を吐き出す。 新年は、光汰は里沙ちゃんと神社で、瑛二は家族と家で迎えるらしい。 そして宗平は…、宗平のことは…何も知らない。 部活のメンバーに誘われて出かけたりするのだろうか、それとも…誰か女の子に誘われているのだろうか……。 考えだすと止まらなくて、とにかく手を動かそうと手近なゴミを手に取ってゴミ箱に放り込んだ。 俺はあれから1ヶ月近く経つのに、全くどこにも進めていないようだ。

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