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12/31(火)

大晦日の今日…。 長岡に引っ張られて食材の買い出しに来ていた。 「長岡って料理とかすんの…?」 「少なくとも春人よりはできる気がする。」 いや、まぁ俺が出来ないのは認めるけど引き合いに出さなくても良くないか? そう思いながら見ていると持っていたカートに長岡が適当に商品を放り込んでいく。 「まぁどうせ今日と明日の分だけだし適当に肉食っときゃ良いだろ。」 「風情無えなぁ…。」 そうボソリと呟くと長岡は俺を見ながら「寿司でも食うか?」と聞いてきたけど、パック寿司をただ並べて大晦日の特番を見てる俺たち2人の姿を想像したらなんだか笑えた。 その後もとりあえず適当に2人で食べたいものの案を出しては「俺たちじゃ作れない」だの「予算オーバー」だの言いながら買い物を続けた。 そして長い商品選定の後に漸くレジに行ったのだがそこには長蛇の列。 「大晦日のレジがこんな混んでるなんて知らなかった…。」 「まぁ特に急ぎの用も無ぇし、良いだろ。」 案外気が長いらしい長岡は特にレジを選ぶでもなく、1番手前の列に並んでスマホを弄り出す。 俺は手持ち無沙汰にやることも無く、時々周りを見回しては時間を過ごしていたのだけど、後方から聞き覚えのある幼い声が聞こえてきて、それに反応し思わず振り返った。 「姉ちゃーん!お砂糖持ってきたよ!」 「幸広、あんたこれグラニュー糖じゃん。」 そこには幸広くんと、綺麗な顔をした女の人が立っていた。 「あ!春人くん、こんにちは!春人くんもお使いですか?」 俺に気が付いた幸広くんがぴょんぴょんと跳ねながら俺の元に来る。そんな幸広くんの仕草はかわいいのだけど俺としては近くに宗平がいるのではないかと思って気が気でない。 「あ、うん。ちょっと…。えっと…宗平は…。」 視線を泳がせながら尋ねた俺に、綺麗な女の人…恐らく宗平のお姉さんだろう人が「あぁ。宗平の友達?あいつなら来てないよ。」と答えた。 「兄ちゃん、ずーっと変なんです!一緒にゲームもしてくんないし、つまんない!」 むくれる幸広くんの言葉にドクリと心臓が脈を打つ。 お姉さんは「遊んでもらえないなら宿題してな。」と手厳しい一言を幸広くんに送った後、俺に向き直った。 「宗平の高校の友達よね?私はよく知らないんだけど、最近あいつ元気無いみたいなの。何か学校であったかとか知ってる?」 兄弟の不調を心配する彼等を前に、宗平が俺のことを気にしてくれているのかも、とか不謹慎なことを考えていた俺は、自分が恥ずかしくなる。思わず目を逸らし「ごめんなさい。分からないです…。」と答えた俺に、お姉さんは少し不審そうな顔をしていたけれど「そう。突然こんな話して悪かったわね。それじゃあ。」と言って幸広くんを連れて去っていった。 「ばいばい春人くん。またお家来てくださいねー。」 幸広くんがお姉さんに手を引かれながら振り向いて言ってきた。俺はそれに「うん。またね。」と答えたけど……きっとこの約束が果たされる日は来ない。 「おい。前進んだぞ。」 長岡の声に振り返りカートを動かす。 「笠井の家、行くのか?」 「行けるわけないの…知ってるだろ。」 聞いてきた長岡にそう返すと長岡は前を見たまま静かに笑った。

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