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1/1(水) from宗平
「あけましておめでとうございます!姉ちゃん!お年玉ちょうだい!!」
こたつに入り縮こまる俺と姉ちゃんの周りを、冬の寒さなんて知らないかのように幸広が跳ね回りながら強請る。
「甘い。兄弟から貰えるなんてそんな甘い考えじゃこの先やってけないよ。幸広。」
「でも姉ちゃんバイト始めたじゃんー!俺どうしても新しいバットが欲しいのー!」
一蹴されてもめげることなく食い下がった幸広だったが、やっぱり姉ちゃんはお年玉を渡してやることはなかった。
「全然お金足りない…。誰かお年玉くれないかなぁ…。」
しょんぼりしながら今のところ貰った金額と、この後貰えるであろう見込み金額が書かれた紙を見つめ呟いた幸広に、我が弟ながらなんてがめつい奴なんだと思っていると、幸広は「春人くんお年玉くれないかなぁ…。」と言い出した。
「いや。それはさすがにダメ。」
いじける幸広を姉ちゃんと俺との間に座らせて言い聞かせるようにしながら肩を抑えた。
春人はバイトもしていない学生だし、増してや幸広と会ったのは2回だけ。そもそもなんでここで春人の名前が出てくるんだと思っていたら、姉ちゃんが「あぁ。昨日スーパーで会った子ね。」と呟いた。
「え?昨日のお使いの時?」
「そう。背の高いイケメンと一緒に居たよ。髪短かめでシュッとした男らしい顔の…。パッと見高校生に見えないけどあのイケメンもあんたの同級生?」
姉ちゃんの説明はざっくりとし過ぎていて、それだけで誰かを絞り込むのはたぶん困難なんだけど…俺には誰と居たかが容易に想像できてしまって顔が引き攣りそうになる。
「あー…、それたぶん俺のバスケのチームメイト。同い年だよ。」
「あぁ。バスケ部。じゃああんたのチームはあの子もいるしあんたもいるし眼福だね。」
ははは、と笑って冗談を言ってきた姉ちゃんに「何言ってんだよ。」と苦笑いして返す。心の中では昨日2人に出会さなくて本当に良かったという想いと、その場に行って春人を裕大から引き離したかったという想いがせめぎ合っていた。
なんで裕大と居んだよ…春人…!
俺の記憶の中では春人は裕大を嫌っていて、抱かれているのだって完全に裕大の一方通行。そこに春人の意思は無かった。
一緒に買い物だなんて…想像もつかないほど仲が良くなっているのではないかという2人の関係性に焦る。
…って…、こんなこと考えてたって…俺はもう春人に何もしてやれないのに…。
もう自分では関わることは出来ないのだと言い聞かせながら溜め息を吐いた。
こんなに暗い気持ちで新年を迎えたのは生まれて初めての経験だった。
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