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「おい。朝のあれは何だよ。」 「ぃ"っ……」 短縮授業の後、真っ直ぐに家へと帰ってきた俺と違って、クラスメイト達とどこかに行っていたらしく少し帰りの遅かった長岡は、帰ってくるなり廊下で見つけた俺の手を引き部屋へ連れてきた。そして俺を壁際に追いやり、掴んだその手を少し上に上げ壁に押し当てるとギリギリと力を込めてきた。 「笠井のことフッたのはお前なんじゃねーのかよ?甘えた顔して擦り寄ってんじゃねぇ!」 甘えた顔を…していたのだろうか?自覚は無いし、宗平のことが気に食わない長岡の意見だから信憑性なんて無いのだけれど、ハッキリと否定できないのは、宗平と会えたことと宗平が俺をまだ好いているのかもしれないということが嬉しくて堪らなかったのが事実だから。 「俺が宗平にどんな顔してたって…長岡に関係無いだろ…。」 散々… 宗平をフッてから苦しくて仕方がなくて、その苦しさを紛らわすように長岡の与える快楽の中に溺れようと散々に利用していたというのに…なんて言い草だろう。 宗平には何も残せず奪うだけの俺との日々を後悔してほしくなくて遠ざけたというのに、長岡には「これが長岡の復讐だから。」と身を任せ、あまつさえこのまま長岡の望むように全てを捧げてしまうのも悪くないのかもしれないと思ってしまっていた。 宗平をフッた当初はこの変化を自分自身でも理解出来ていなかったが、蓋を開けてみれば何てことはない。 現れたのは…薄弱で、だが狡猾な自分の姿だった。 「悪い…。1人にさせて…。」 そう、腕の痛みを感じながらポツリと呟くように頼む。 今朝改めて自覚した自分の心の在処に、今後の2人への接し方を少し考える時間が欲しかった。 なのに──… 「お前の良いようにばっか動けるかよ。」 「ゃ…だ…、なが…ッ!」 重ねられた唇と暴かれていく体。 冬の寒さで冷えていたはずの体はすぐに熱を帯びていく。 「んぅ…ダメ…や…」 俺はまた流されていくのが嫌で首を横に振り言葉を紡ぐけど、長岡はそんな俺を黙らせるように喉元に噛み付いた。 「宗平…。」 何故か…口の端から零れ落ちたその名前。 蚊の鳴くような小さな声だったのに、長岡の耳にはしっかりと届いたようで長岡は更にギリリと手を強く握って、俺をいつも以上に酷く苛んだ。

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