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1/27(月)

手袋をはめて登校した俺に「珍しいねー。」と声を掛けてきた光汰は、朝練を終えてから教室にやってきた宗平のカバンの中に同じ柄のマフラーを見つけて顔を歪めた。 「そういうことなの?甘っ。うざっ。」 悪態を吐いた光汰に苦笑いして返すと同時に、光汰は本当に細かい所によく気が付くなぁと感心する。女性と話すことができない性格でなかったらきっと光汰もそれなりにモテていたろうなと予想するが、まぁ今は里沙ちゃんもいるし関係の無い話か。 「金曜は2人ともほんとありがとな。お陰で上手くいきました!」 満面の笑みでそう言った宗平は光汰と瑛二の背をバシバシと叩く。 「あーはいはい。良かったですねー。」 光汰は至極面倒そうに明後日の方向に視線を向けて適当に答えた。 「でもこうやって4人でまた喋れて嬉しいよ。」 そして瑛二は普段はあまり変わることの無い表情を笑みに変えてそう言うから、俺はそれを見てジーンとして目頭が熱くなってしまう。 「うん…。ありがとう…。」 涙が出そうになった俺を見て、宗平が1歩前に出て微笑みながら頭を撫でたが、その手を光汰がバシリと払い落とした。 「宗ちゃん。あなたはもっと周りを気にしましょう。」 「光汰に言われるってヤバいよ。宗平。」 「あぁ。ほんと。」 真剣に言ったはずの光汰の言葉に珍しく瑛二が茶々を入れて宗平がそれに乗っかる。光汰は「2人して何なのー!」と怒ったが、今度は俺も一緒になって笑ってしまった。 「でも本当に良かった。春人が元気になってくれて。」 授業の始まる直前に宗平たちと共に席に戻ろうとしたはずの瑛二が俺の横に立ってそう言ってきた。 「宗平とのことが正しいのかはまだ俺ら高校生だからよく判らないけど、でも俺は春人がまた笑うようになってくれて嬉しいよ。」 その言葉の中に、俺と宗平とのことに対する多少なりの抵抗感があるのだというのはなんとなく感じた。もしかしたら…瑛二の中にはあの場に居なかった理由が妹たちの迎え以外にもあったのかもしれない…。 それでも普段はあまり笑わない瑛二が今日は朝からよく笑って冗談まで言っていたのは本当に俺が元気になったのを喜んでくれているからなのだろう。 「うん。本当に、ありがとう。瑛二。」 そう答えた俺に、瑛二は微笑んで返すと自分の席に戻っていく。 その背中を見送りながら俺は、瑛二や光汰の為にも宗平との関係は大事にしなければいけないな、と改めて認識し、気を引き締めた。

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