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里沙ちゃんに連れられやって来たのは女の子の姿が目立つ小洒落たカフェ。コーヒーだけを頼んで暫く待っていると出てきたのは2つのコーヒーと2つのケーキ。 「このザッハトルテがすんごいおいしいの。1週間早いけど私からのバレンタインチョコってことで。」 そう言いながら里沙ちゃんが2つのうち1つを俺の前に差し出してきた。 「え!?いやいやそんな…!気にしなくて良いのに…。」 そう1度断りを入れた俺は里沙ちゃんが「どうせ2つも食べらんないし、本当においしいから。」と言ってきたのでおずおずとその皿を受け取り、フォークで切り分けたそれを1口口に運んでみる。 「ん。ほんとだ…。おいしい…。見た目ほど甘くなくて…。」 「でしょー?うちの大学でも人気なんだー。」 俺の反応を見た里沙ちゃんは満足そうに自身もケーキを口に運ぶ。 「学校はどう?楽しい?」 「あ、うん。皆とも変わらずやってるよ。」 そう当たり障り無く答えると里沙ちゃんはうんうんと言うように頷く。 「光汰は里沙ちゃんからバレンタインチョコ貰えんの楽しみにしてて、ここ最近毎日デレデレしてるよ。」 そう報告すると里沙ちゃんは「あはは。」と笑った後に、上がった口角をそのままに黙ってケーキを見つめた。 「ねぇ…光汰って、学校に女友達とか多いの?」 そうぼんやりとした表情で聞いてきた里沙ちゃんに「え?」となるが、光汰に女友達がいないのは確実なので「少ないっていうか…いないね。」と答えるが、里沙ちゃんの表情は変わらない。 「じゃあ…モテたりする?」 いや、しません。と即答しそうになるが、彼女の前でそれを言うのはあまりにも失礼だろうと思いその言葉は押し込める。 「うーん…そもそも光汰、女の子とは話せないから…。里沙ちゃんの時だけ特別に頑張ってたっていうか…。……なんかあった?」 そう尋ねると里沙ちゃんは迷ったような表情をして暫く黙り「いや、やっぱ良いや。気にしないで。」と言ってきた。 「ていうかごめんね!なんか空気悪くしちゃって!ここは私が出すから、もう1個でも2個でも好きなだけ食べていいよ!」 突然テンションを上げてそう言ってきた里沙ちゃんに、なんだか追求できる空気ではなくなってしまって俺は話を合わせると「じゃあホワイトデーになんかお返しするね。」と苦笑いして返した。

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