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2/18(火)
宗平は今日も機嫌が良いままで、俺はその姿を見る度にズキズキと痛む心の内を無視して顔に笑みを貼り付けた。
長岡の宣言通り今回はどこにも痕は残っていないし、宗平をフッた時の長岡に対する態度への後悔から以前のように強く抵抗できない俺の腕は拘束するまでもなかったようで、そこにも縛られた痕は無い。だから俺が言い出したり、何かきっかけが無ければ昨日のことはバレないだろうが…本当に宗平に隠したままでいるのが正解なのかどうかは正直よく分からない…。
「あと1週間で付き合って1ヶ月だな。」
だが昼休みに飲み物を買いに自販まで来たその足で中庭に少し立ち寄って俺の顔を覗き込みながら言ってきた宗平がとても嬉しそうで…俺はこの笑顔を壊したくなくて、迷いを飲み込んで頷いた。
「どっか行きたいとこある?」
「えぇっ、別に出かけなくても良いよ…。」
宗平の問いかけにまだ手袋のことが気掛かりでそう答えると宗平は不満そうに「何もしなくて良いってことか?」と聞いてくる。
「そうじゃないけど…。宗平と2人なら…学校のこういう場所で話してるだけでも、特別…だから。」
少し顔に熱が集まってくるのを感じながら見上げると宗平は微妙な顔をするが、その口元はニヤけるのを抑えるように強ばっているようにも見える。
「その返しはズルい。」
宗平はそう言いながら額に手を当ててチラリと横目に俺を見下ろした。
「だって本当のことだし…。」
「あーもう抑えらんなくなるからやめろって。」
やはり嬉しいようで半笑いだから説得力は無いが、そんなことを言ってくる宗平に今度は少し俺の方がムスッとしてしまって深呼吸していた宗平の腕を引いて、いつもの化学室へ来た。
ピシャリと確実に扉を閉めて、窓のある位置からは死角になる場所まで宗平を引っ張ってくる。
「春人?」
不思議そうに尋ねてきた宗平を振り返ってチラリと見た後に、手に持った缶を机に置き宗平の首に腕を回し、俺から唇を重ねる。
チュッ…と音を立てすぐに離れると宗平は目を見開いていたがクスリと笑って俺の腰に腕を回してきた。
「んっ…。」
そうして何度も啄むような口付けを交わす。だが、突然そこに舌まで侵入してきたものだから俺は「んんぅ!?」と間抜けな悲鳴を上げながら宗平の肩を叩いた。それでも宗平は離れなくて、淫靡な水音が響き始める。
「はっ…だめ…ン…。」
暫く深く俺の口内を堪能したらしい宗平は唇を離した後、机に置かれた缶を見て「ココア味。」と呟いた。
「ッ……!」
何も言えない俺が拳を作って宗平の腕を軽く殴ると宗平は「いてっ」と言いながらそれでも嬉しそうに笑った。
「でもまさか"今度"が学校でのキスだとは思わなかったわ。春人でも場所なんか構ってらんない時があんだな。」
「別に…そういう訳じゃ…。」
真っ赤になりながら視線を逸らした俺は…もしかしたら長岡との昨日のことを早く上書きしたいという衝動が起こさせたものだったのかもしれないという可能性を……一瞬だけ頭に浮かべてすぐに掻き消した。
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