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2/24(月)
3連休最終日の今日は、建物のエアコンが急に動かなくなったものだから緊急修理だとかで部屋に作業員の人が忙しなく出たり入ったりを繰り返している。
所在無さげに廊下に出ていると同じように部屋から出てきたらしい長岡と目が合った。
「お前出かけなくて良いのかよ?」
「…なんで?」
突然に聞いてきた長岡の意図するところが俺と宗平が付き合い出して1ヶ月なのが今日だということなのではないかと思えたが、まさか長岡までもがそんなことを覚えているはずはないと考え直して、少し訝しげに聞き返すと長岡は少し黙った後に「何も予定無ぇの?」と更に質問を重ねてきた。
本当は今日は宗平と映画にでも行こうかという話をしていたのだが、宗平は離れて暮らす祖母の体調が良くないらしく急遽そちらに3日間とも出向くことになり俺とは会えなくなってしまったのだと金曜の夜に電話で連絡をしてきた。
「別に長岡には関係無いだろ…。」
そっぽを向いて小さな声で答えた俺は、足元に映る自分の影を見つめていたのだけど、そこに長岡の影が近付いてきたのに気付いて顔を上げた。
「なら俺と出掛けようぜ?」
「は?いや、なんで…。」
困惑する俺を置いて長岡は勝手に俺の部屋に入ると適当なコートを取り出し俺に投げつけ、そして自身も部屋に戻るとコートを羽織って出てきた。
「ほら、行くぞ。」
グイッと手を掴んで引かれる。
宗平がくれた手袋の無い剥き身の俺の手は、掴まれた長岡の手の温度を直に感じてしまい、俺は恥ずかしくなってその手を払った。
「い…行かねぇし…。」
記念日…と呼ぶのかも定かではないが、それでも元々宗平と予定があった日に他の人…それも長岡と出掛けるなんて絶対にできない。
だが長岡は段上で踏み留まる俺の耳にツイッと唇を寄せると「ここで犯すぞ。」と言ってきた。
バッと思わず耳に手を当てて顔を離した俺を見て笑うと長岡はまたグイグイと俺の手を引いて、そのまま駅へとやって来た。
「なぁ…どこ行くんだよ…?」
「知らね。」
恐る恐る尋ねると長岡は悪びれた様子も無くそう答え、俺はそれに顔を顰めた。
「何も目的無ぇなら俺が居る必要も無いだろ?帰る。」
そう言って離そうとした俺の手を長岡が強く握り込む。
「目的ならあんだろうが。お前と居るって目的が。」
目を見て言われたその言葉に俺は思わず合わせられたその目を逸らした。
「お…俺は…宗平と付き合ってるから…。」
だから長岡とは居られないのだ、と続けようとするが、言い切るより先に長岡が言葉を重ねる。
「知ってる。だから今日はお前と居てえんだよ。」
そんなことを平然と言ってくる長岡の意図が分からずに俺は余計に困惑する。それでもやはり今この瞬間だって宗平に悪い気がして繋がれたままの手を離そうと揺すったが、長岡はそんな俺を1度見ると視線を泳がせて「あれで良いか。」と言った後、手を引き改札を抜け俺を電車に押し込んだ。
そんな長岡が俺を連れてきたのは…長岡の雰囲気からは掛け離れた水族館というかわいらしい場所だった。
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